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米国「MOBI/CESMII」と中国「可信数据空間」、米中両国のデータ共有圏の現状は加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(7)(2/6 ページ)

欧州を中心にデータ共有圏の動向や日本へのインパクトについて解説する本連載。第7回は、米国の「MOBI/CESMII」と中国の「可信数据空間」など、米中両国の取り組みを紹介する。

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米国における取り組み

 米国では、自動車領域におけるデータ共有イニチアチブ「MOBI」の取り組みが進み、バッテリーパスポートやGAIA-X/Catena-Xなどとも連携が図られている。加えて、スマート製造の企業横断コンソーシアムである「CESMII」が、データ連携を目指してスマート製造相互運用性プラットフォームの開発を行うとともに、グローバルでManufacturing-Xの取り組みを進めるInternational Manufacturing-X協議会に参画し連携を図るなど、米国としての取り組みと、欧州との連携が同時並行で図られデータ共有圏への対応が進んでいる。

 また、足元では第2次トランプ政権において、関税をはじめ調達国に応じた対応が重要政策となっているが、その際に調達国/サプライチェーンを詳細かつ正確に把握する上でも、サプライチェーンにおけるデータ連携やデータ共有圏活用が鍵になってくると想定される。以下にCESMIIとMOBIの取り組みについて触れたい。

CESMIIによるスマート製造相互運用性プラットフォームの取り組み

 米国では、前回記事で紹介したManufacturing-Xの取り組みをグローバルで広げるためのInternational Manufacturing-X協議会にCESMIIが加盟し、国際連携を図っている(図4)。

図4
図4 International Manufacturing-X協議会のメンバー[クリックで拡大] 出所:筆者作成

 CESMIIは、Clean Energy Smart Manufacturing Innovation Instituteの略で、米国におけるスマート製造推進のため2016年に設立された公的/民間共同のイノベーション機関だ。スマート製造の民主化(Democratize Smart Manufacturing)を通じて、製造業の幅広い層が先端技術を活用できるようにし、品質、スループット、コスト、安全性、設備信頼性、エネルギー生産性といった指標を飛躍的に向上させることを目指している。

 UCLAやノースカロライナ州立大学などの大学/研究組織、フォード、GM(General Motors)、ステランティスといった米国主要自動車メーカー、産業オートメーション企業のRockwellやPhoenix Contact、エネルギー企業のExxonMobil、消費財企業のP&G、ライフサイエンス企業のPfizerをはじめ、約200の組織/企業が参画している。

 CESMIIとしては、業界を超えた製造データのプラグアンドプレイ型での相互接続性を担保したスマート製造相互運用性プラットフォーム(Smart Manufacturing Interoperability Platform)を開発しており、こうした取り組みとCatena-Xとの接続連携や、International Manufacturing-X協議会への参画、さらにはデジタル製品パスポート(Digital Product Passport)をはじめ欧州の取り組みとの連携を行っている(図5)。

図5
図5 CESMIIが開発しているスマート製造相互運用性プラットフォーム[クリックで拡大] 出所:CESMIIプレゼンテーションより

MOBIによる自動車×データ連携の取り組み

 米国が主体となっている取り組みとしてはMOBIが挙げられる。MOBIは、Mobility Open Blockchain Initiativeの略であり、2018年に設立された。自動車メーカーやテック企業など業界横断の協業により、ブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)の標準化と普及を推進し、モビリティをより安全/環境に優しく、安価でアクセスしやすいものにすることをミッションとする。

 米国系のフォード、GM、ステランティス、欧州系のBMW、ダイムラー、ルノー、日系のトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、マツダ、韓国系のヒョンデ(Hyundai Motor)など、米国内外の自動車メーカーや、ボシュ、ZF、デンソー、コンチネンタルなどの自動車部品サプライヤー、AWS、マイクロソフト、オラクル、IBMなどのIT企業、ブロックチェーン企業、金融機関などが参画している。

 MOBIとしてはその名前に現されるように、モビリティ分野におけるブロックチェーン/SSI(Self-Sovereign Identity:自己主権アイデンティティー)技術の活用に重きを置いている。欧州が進めるGAIA-Xや、Catena-Xなどの取り組みとは補完関係にあり、相互での実証や、相互運用性の検証などの取り組みも進む他、欧州で規制が準備されているバッテリーパスポートについても準拠できる仕組みを提供している。

 ユースケースとしては、本記事の4ページ目でまとめているようにさまざまな取り組みが進んでいる。同じ自動車業界を対象としているCatena-Xが、自動車製造プロセスやリサイクルプロセスにおけるサプライチェーンやエンジニアリングチェーンに力点を置いているのに対して、MOBIはサプライチェーンとともに車両自体や、車両個別IDの活用を通じたユースケースにも力点が置かれている点が特徴といえるだろう。

⇒「MOBI」のユースケースはこちら

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