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米国「MOBI/CESMII」と中国「可信数据空間」、米中両国のデータ共有圏の現状は加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(7)(4/6 ページ)

欧州を中心にデータ共有圏の動向や日本へのインパクトについて解説する本連載。第7回は、米国の「MOBI/CESMII」と中国の「可信数据空間」など、米中両国の取り組みを紹介する。

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MOBIのユースケース例

【ユースケース例】車両アイデンティティー(VID:Vehicle ID)

  • 概要
    • ブロックチェーン上に車両のデジタルID(自己主権型デジタルツイン)を確立するWG
    • 車両の「デジタル出生証明書」ともいえる基盤を定義し、物理的な自動車に対応するデジタルデータをひも付けて管理
    • これによりオーナーは車両へのアクセス権管理や所有履歴の確認、重要なライフイベント(整備や事故履歴など)の記録を行え、コネクテッドモビリティのエコシステムで車両が信頼できる主体として機能
  • 目的
    • あらゆるモビリティ向けブロックチェーン応用(使用状況に応じた課金サービスなど)の土台として信頼できる車両IDを確立する
    • 自動車メーカー各社が独自に取り組んできた車両デジタル証明書を統一規格にし、相互運用可能にすることで、車両履歴データの真正性を保証しつつ所有者が自分のデータを制御できるようにする
  • ユースケース
    • 車両登録のブロックチェーン化(各国の登録システムと連携しグローバルに一意な車両台帳を実現)とメンテナンス履歴の追跡(整備/修理履歴を不変的に記録し中古車評価等に活用)
    • 確立された車両IDを基にした課金サービス(UBI保険、走行税など)や車両間自動取引(EV(電気自動車)充電やロード料金自動精算など)
    • 将来的に車両データとサービスを組み合わせた新ビジネス創出が期待

【ユースケース例】Trusted Trip(信頼できる走行記録)

  • 概要
    • 走行(トリップ)データを信頼可能な形で記録/共有するための標準仕様策定
  • 車両や運転者などにひも付く分散型IDと、信頼できる時刻/位置情報を組み合わせて各移動の証跡(トリップ証明)を生成し、多様なモビリティサービスで活用
  • 目的
    • 走行距離や利用状況に応じた課金や保険料算定など、「使った分だけ」のモビリティサービスを可能にし、道路料金や保険料を公平かつ効率的に精算
    • 各トリップのCO2排出量を正確に把握し、カーボンクレジットの創出やエコドライブ促進など環境インセンティブにも活用
  • ユースケース
    • 道路使用料や渋滞税の自動課金、駐車場の時間課金、走行距離連動型保険(UBI)の精算、各移動のCO2排出量トラッキングとクレジット発行、マルチモーダルMaaS(Mobility as a Service)における移動実績証明
    • 走行経路の排出量を証明し企業がオフセットに利用、環境配慮運転に対してカーボンクレジット付与

【ユースケース例】循環経済&グローバルバッテリーパスポート(CE-GBP)

  • 概要
    • 公共/民間のグローバルな取り組みを結集し、標準化された分散型「グローバルバッテリーパスポート」システムを推進するWG
    • バッテリーのライフサイクル全体でデータ連携と相互運用を可能にする基盤を構築し、バッテリー循環経済(サーキュラーエコノミー)への道筋を作ることを目指す
  • 目的
    • EVや再生可能エネルギー蓄電の拡大に伴いバッテリー使用が急増し、各国でバッテリー追跡や情報開示を求める規制(EU電池規則など)が存在
    • バッテリーサプライチェーン全体の循環性/持続可能性を高めるために、グローバルで通用する相互運用標準とインフラを整備する
  • ユースケース
    • EVバッテリーのトレーサビリティー(製造から利用、二次利用、リサイクルまでの追跡)を実現し、適切なリサイクル/再利用を促進
    • 例えば、バッテリーのIDと履歴(構成要素、性能劣化状況、使用履歴など)を検証可能にすることで、安全性確認、リコール対応、セカンドライフ利用(蓄電池の再利用)などを支援する。また、規制順守のためのデータ証明基盤となり、バッテリーデータに基づく新たなサービス(残存価値評価など)の創出も可能に

【ユースケース例】電気自動車グリッド統合(EVGI)

  • 概要
    • EVと電力グリッドの統合を図るWGで、EVの充放電が電力網に与える影響を最適化し、再生可能エネルギーの活用やP2P電力取引を可能にするインフラ標準を策定
    • 電力網の負荷管理、カーボンオフセット算出、カーボンクレジット生成に必要な相互運用システムを定義し、EVGI/IIでは初版標準の見直しや車両から建物への給電(V2B)といった新たな実証に取り組んでいる
  • 目的
    • 再エネ分散型の電力エコシステムへの移行に対応し、EVの普及拡大を支えるために発足
    • EVと充電インフラ/電力会社間で共有すべきコアデータサービスを確立し、グローバルな分散型充電ネットワークの土台を作る
    • これによりEVオーナー、充電事業者、電力網運用者それぞれにメリットを提供し、エネルギーのP2P取引や自動調整を可能に
  • ユースケース
    • Vehicle-to-Grid(V2G)によるEVと電力網の双方向連携(充放電の最適制御)、EV充電によるカーボンクレジットのトークン化(走行の環境貢献度に応じたクレジット発行)およびEV間/EV−施設間のP2Pエネルギー取引や充電サービス共有(例:過剰電力を近隣に融通)

【ユースケース例】金融/証券化/スマートコントラクト(FSSC)

  • 概要
    • 自動車の金融/ファイナンス分野にWeb3/ブロックチェーン技術を適用し、ローンやリース、証券化などのプロセスを効率化/透明化するWG
    • 車両購入の際の融資/リースから債権の証券化まで、関係者(金融機関、メーカー、ディーラー、顧客)の間でデータを共有する信頼基盤を整備し、取引の正確性向上や業務の自動化を図る
    • ディーラー向け在庫融資(フロアプラン)監査や電子登録/電子車両権利証明の自動化に焦点を当てた実証を進めている
  • 目的
    • 自動車購入は高額取引であり従来の金融手続きには非効率や不正リスクが伴う
    • 車両金融プロセス全体にブロックチェーン基盤を導入し、信用コストの低減と取引の信頼性向上を図る
    • ブロックチェーンにより関係者間で単一の改ざん困難な台帳を共有することで、データ照合や承認に要する時間とコストを削減し、不正防止やエクスポージャー管理の強化につなげる
  • ユースケース
    • ディーラー在庫金融(フロアプラン)監査における車両在庫データのリアルタイム照合と不正検知、車両登録/権利証のデジタル化による所有権移転手続きの迅速化
    • 将来的には、車両データマーケットプレースから得られる走行データを活用した新たな融資モデル(例:走行距離や利用状況に応じたローン条件調整)や、自動車ローン/リース債権の証券化の高度化(スマートコントラクトによる支払い自動化など)も想定

【ユースケース例】コネクテッドモビリティデータマーケットプレース(CMDM)

  • 概要
    • コネクテッドカーやモビリティサービスから得られる走行データのマーケットプレースを構築
    • 複数のモビリティ関係者(車両、メーカー、サービス事業者など)がプライバシーとデータ権利を担保しつつデータを共有/取引できるDLT基盤を定義
    • マルチモーダルなモビリティサービスや高度運転支援の発展に必要なデータ連携を促進
    • V2Xデータ交換や位置情報の相互検証、マルチモーダル経路計画、自動運転車同士の協調動作などを可能にする共通サービスとデータスキーマを策定
  • 目的
    • コネクテッドカーから得られる大量のデータを活用するには、企業間で安全にデータをやりとりできる仕組みが必要
    • データの所有権やプライバシーを保護しつつ価値あるデータ取引を可能にする基盤を作る
    • 従来はサイロ化していた車両データを共有財産化し、新サービス創出(例:交通最適化や車両AIの高度化)のための機械学習データプールを形成する
  • ユースケース
    • V2Xデータ流通(車両がインフラや他車と走行データやセンサー情報を交換)、走行データの収益化(車両オーナーが自車データを匿名提供し報酬を得る)、マルチモーダル経路最適化(異なる交通手段間でデータを共有してシームレスな経路案内を実現)、自動運転車間のデータ共有(走行データを相互提供してアルゴリズム精度を向上)
    • データ提供者の権利を守りつつ必要な相手にだけデータ開示する証明付きの仕組み

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