EU未加盟のアイスランドとノルウェーがEUのR&Dプログラムに積極参画する理由:海外医療技術トレンド(119)(1/5 ページ)
前回、北欧諸国の中でスウェーデンを取り上げたが、今回はEU未加盟のアイスランドやノルウェーが欧州全体のR&Dで果たしている役割について取り上げる。
前回、北欧諸国の中でスウェーデンを取り上げたが、今回は欧州連合(EU)未加盟のアイスランドやノルウェーが欧州全体のR&Dで果たしている役割について取り上げる。
EUのR&Dプログラムに積極参画してきたアイスランドとノルウェー
アイスランドとノルウェーは、欧州経済地域(EEA)協定に基づき、研究、技術開発、環境、文化などさまざまな領域で、EUと密接な関係を築いてきた。医療機器に関しては、アイスランド医薬品庁(IMA、関連情報)やノルウェー医薬品庁(NMA、関連情報)の下で、本連載第69回で触れた「医療機器規則(MDR)」(関連情報)および「体外診断用医療機器規則(IVDR)」(関連情報)が適用されている。
ノルウェーは1987年、アイスランドは1994年より、EUの研究および革新プログラムに参画している。両国は、2014年、EUの研究開発プログラムの「ホライズン2020」に参画した最初の非EU諸国となり、2021年9月には、ホライズン2020の後継プログラムである「ホライズンヨーロッパ」に最初に参画した国となっている(関連情報)。過去にアイスランドやノルウェーが参画したEUの研究開発プロジェクトとしては、以下のような事例がある。
- SEAFOODTOMORROWプロジェクト:持続可能な海産物
- MARINERG-iプロジェクト:洋上再生可能エネルギー
- LIBBIOプロジェクト:貧しい土壌でも育つ新しい作物
- CANCER-IDプロジェクト:がんを診断する液体生検テスト
- OpenAIRE-Advanceプロジェクト:オープンサイエンスの推進
- BLUE-ACTIONプロジェクト:北極でのより良い天気予報
- MUNINプロジェクト:自律型貨物船
これらのうちCANCER-IDプロジェクト(関連情報)は、血液ベースのバイオマーカーの標準的なプロトコルの確立と臨床的検証を目的とした官民連携パートナーシップであり、学術/臨床研究の専門家、革新的な中小企業(SMEs)、診断企業、製薬業界の専門家が集結して、液体生検の臨床的有用性を確立するための環境を提供してきた。CANCER-IDのコンソーシアムは、EUに加えて欧州製薬団体連合会(EFPIA)を幹事とする革新的医薬品イニシアチブ(IMI)の資金提供を受け、13カ国から36のパートナーが参加している。非EU加盟国であるノルウェーからは、オスロ大学病院が参画している(関連情報)。
ノルウェーでは、1952年にがん登録制度が設立され、がんの診断/治療に関する詳細なデータの収集と提供を通じてがん対策の向上に寄与してきた。オスロ大学病院は、ノルウェーのがん研究の中核拠点であり、日本からの研究者も積極的に受け入れている。
ノルウェー保健・介護サービス省は2025年2月14日、「2025〜2035年国家がん戦略」を公表している(関連情報)。この戦略は、EUの大規模な取り組みや、英国、米国における国家的取り組みに触発されたものであり、以下のような目標を掲げている。
- がん予防の先進国になる
- 良好な患者ケアのパスウェイに関する先進国になる
- 利用者重視のがん治療を実施する
- より多くの患者が生存し、長く生きられるようにする
- 可能な限り最高の生活の質を提供する
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