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EU未加盟のアイスランドとノルウェーがEUのR&Dプログラムに積極参画する理由海外医療技術トレンド(119)(2/5 ページ)

前回、北欧諸国の中でスウェーデンを取り上げたが、今回はEU未加盟のアイスランドやノルウェーが欧州全体のR&Dで果たしている役割について取り上げる。

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オスロ大学病院が調整役を担うがん領域の「PRIME-ROSE」プログラム

 ホライズンヨーロッパのプログラムの中で、オスロ大学病院が調整役を担っているのが、欧州委員会が2023年4月24日に承認した「PRIME-ROSE(実用的な臨床試験を活用したがん精密医療再利用システム)」である(関連情報、PDF)。このプロジェクトは、欧州委員会の「ホライズンヨーロッパがんミッション」からの資金提供を受けて、 2023〜2028年の約5年間実施される予定である。

 PRIME-ROSE(関連情報)では、以下のような目標を掲げている。

  • 現実的なモデルを提供することにより、EUおよびそれ以外の地域における個別化がん医療(PCM)へのアクセスを持続可能性のあるように改善する
  • さまざまな社会経済的状況や償還制度に対応できる柔軟なモデルを通じてPCMの実施を促進する
  • 分子プロファイリングの実用化を加速し、それに合わせてPCMの普及を促進する患者および市民のPCMへの関与を向上させる
  • リアルワールドにおけるQOL(生活の質)データの体系的な収集と治療の安全性評価を実施する
  • 政策立案者や地域、国、EUレベルの医療当局に意思決定のためのエビデンスを提供する
  • 患者、医師、支払者、民間セクターなど、欧州社会の多方面に利益をもたらす
  • 「欧州がん撲滅計画」「がんミッション」「欧州保健データスペース(EHDS)」に貢献する

 このコンソーシアムは、図1に示す通り、EU域外のノルウェーおよび英国を含む19カ国の28パートナーサイトより構成されている。

図1
図1 PRIME-ROSEの参画パートナーサイト 出所:Oslo University Hospital「PRIME-ROSE Partner Sites」(2025年5月12日時点)

 コンソーシアムの傘下には、以下の通り、8つの作業プログラム(WP)が設定されている。

  • WP1:データ収集(座長:オランダ・ライデン大学医療センター)
  • WP2:対照コホート(座長:ノルウェー・オスロ大学病院)
  • WP3:拡大コホート(座長:ノルウェー・オスロ大学病院)
  • WP4:早期アクセスとドラッグリパーパシング(座長:オランダ・ライデン大学医療センター)
  • WP5:EUの日常診療における実装(座長:スウェーデン医療経済研究所)
  • WP6:PCMへのアクセスのための社会的イノベーション(座長:スウェーデン医療経済研究所)
  • WP7:組織とプロジェクト管理(座長:ノルウェー・オスロ大学病院)
  • WP8:普及活動(座長:フィンランド・ヘルシンキ大学病院)

 PRIME-ROSEでは、コホート研究、プロジェクト管理など、3つのWPの座長をノルウェー・オスロ大学病院が担っている。本連載第70回で、欧州委員会のがん撲滅計画(関連情報)を取り上げたが、EU未加盟国のノルウェーも欧州全体のがん撲滅に向けた研究で大きく寄与している。

 なお、PRIME-ROSEは、本連載第116回で触れたEUのEHDS(欧州保健データスペース)に関連して、以下のような取り組みを設定している。

  • ニーズ評価:MS(加盟国)およびCCC(包括的がんセンター)のニーズを特定し、ネットワークがリソースを集約し、プラクティスを統一して、EHDSと連携した独自のツールを開発できるようにする
  • 品質モニタリングシステムの構築:ネットワークのメンバーから収集された標準化データ(EHDS、OPTIMA)を活用し、品質モニタリングシステムを開発する

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