門真から世界に向けたモノづくりを実践、パナソニックのアビオニクス事業の実力:モノづくり最前線レポート(3/3 ページ)
パナソニック コネクトのアビオニクス事業が大阪府門真市の中核拠点で会見を開くとともに、同拠点内の生産ラインを報道陣に公開した。本稿では機内エンターテインメントシステムの世界市場で大きな存在感を見せる同事業の新製品開発や生産ラインにおける取り組みを紹介する。
設備による自動化に加えて人手による最終組み立てラインの効率化も
先述した通り、門真のアビオニクス ビジネスユニットはアビオニクス事業の唯一の生産拠点となっている。機内エンターテインメントシステムやキャビンマネジメントシステムが20年以上の長期利用が見込まれるため、部品調達に対応するサプライヤーをはじめさまざまな協力会社との連携が重要になってくる。加藤氏は「特に航空機向けの要件を満たす材料を長期で調達し続けることは難しい。“アビオファミリー”としてしっかり取り込んでいく」と説明する。
報道陣向けの生産ライン公開では、製品開発を行う技術ラボ、車載向け以上に厳しい要件が求められる航空機向けシステムに対応するための信頼性試験室、少量多品種に対応する生産ラインなどを紹介した。
製品開発を行う技術ラボでは、タッチパネルのHMI(Human Machine Interface)のソフトウェアをデバッグする様子を見せた。実際にタッチパネルの操作による応答を確認するためにロボットも用いており、これによって24時間体制でデバッグが行えるとのことだった。
信頼性試験室では製品や構成部品に対して、熱衝撃や高温/低温への耐久試験、壊れる寸前までの条件を見極めるライフエンド試験などを行っている。これらのさまざまな試験によって、20年以上から30年にわたる利用にも対応可能な航空機向けシステムの信頼性を確保しているのだ。
生産ラインは、機内エンターテインメントシステムに組み込む基板の実装ラインや、プラズマ洗浄機や接着剤の塗布機などを用いて筐体内への有機ELディスプレイパネルの組み込みを自動化するライン、人手による最終組み立てラインなどから構成されている。機械によって自動化されていない最終組み立てラインは生産効率を低下させるボトルネックになるといわれることも多い。Astrovaの最終組み立てラインでは、いわゆる1個流し生産方式を採用することで生産効率の向上を実現している。
完成した製品は温度や振動に関する試験を全数で行ってから出荷することになる。そして、門真のアビオニクス ビジネスユニットから顧客に向けて直接出荷する上で必須の存在となっているのが、FAA(米国連邦航空局)から権限移譲された認定検査員による出荷見極めで実現するPMA(Parts Manufacturer Approval)だ。門真のアビオニクス ビジネスユニットでは3人の認定検査員が業務を行っている。
なお、工場の生産ラインと同じ階層にはアビオニクス ビジネスユニットのオフィススペースがある。近年のリニューアルによってフリーアドレスになっており、現在は技術と品質以外のメンバーが入居して業務を行っている。今後は技術部門のメンバーもこのオフィススペースに入居する予定だ。
なお、アビオニクス事業では「カルチャー改革」「モノづくり力強化」「SCM&ECM改革」という“3階建て”の成長戦略を推進しており、オフィススペースのリニューアルはカルチャー改革につながる取り組みだ。さらに、米国と日本の人員交流プログラムも行っており両極での連携をスムーズに進める施策も行っている。現在は、2階に当たるモノづくり力強化の段階で、加藤氏が語る“アビオファミリー”としての協力会社の取り込みや、Astrovaの最終組み立てラインにおける1個流し生産方式を採用する上でのデータドリブンな製造が対応している。そして2026年には、3階に当たるSCM&ECM改革に進めたい考えだ。
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