門真から世界に向けたモノづくりを実践、パナソニックのアビオニクス事業の実力:モノづくり最前線レポート(2/3 ページ)
パナソニック コネクトのアビオニクス事業が大阪府門真市の中核拠点で会見を開くとともに、同拠点内の生産ラインを報道陣に公開した。本稿では機内エンターテインメントシステムの世界市場で大きな存在感を見せる同事業の新製品開発や生産ラインにおける取り組みを紹介する。
航空会社と乗客の要求をともに満たす新世代モデル「Astrova」
アビオニクス事業の代表的な製品は機内エンターテインメントシステムだが、その他に乗務員の業務を支援するキャビンマネジメントシステムも手掛けている。機内エンターテインメントシステムの顧客が航空会社であるのに対し、キャビンマネジメントシステムは航空機メーカーが顧客でありパナソニック コネクトのアビオニクス事業はボーイング(Boeing)に純正品として納入している。
これらハードウェアを中心とする製品事業の他、サポート拠点を中核とするシステム保守メンテナンスサービス事業に加え、成長領域に位置付ける機内Wi-Fiサービス事業とコンテンツ/アプリ提供サービス事業があり、これらがアビオニクス事業の4つのコア事業となっている。加藤氏は「アビオニクス事業にとって航空会社と航空機メーカーはもちろん、乗客の皆さまも顧客になる。これら3つの顧客の課題や困りごとを解決するためのイノベーション創出が重要だ」と述べる。
イノベーション創出の事例となるのが、2024年に発表した機内エンターテインメントシステムの最新モデルであるAstrovaだ。乗客が求める機内エンターテインメントシステムにおける快適なデジタル経験、航空会社が求める低コスト運用と軽量化という両者の要件を満たす製品となっている。
Astrovaは、13インチのシート裏に装着するタイプから、ファーストクラスのバーラウンジに設置する42インチまでタッチパネルの画面サイズの異なる7モデルを用意。これらは全て4K解像度の有機ELディスプレイを採用しており、液晶ディスプレイの従来製品と比べてコンテンツへの没入感が極めて高い。なお、13インチと19インチのモデルは門真のアビオニクス ビジネスユニットで、16インチモデルは米国アーバインで設計するなど日米で分担して開発を行ったこともAstrovaの特徴になっている。
また、従来製品ではタッチパネルと一体になっていた外部デバイスとの接続インタフェース部をペリフェラルバーとして単独で交換できるモジュラーデザインを採用した。これにより、タッチパネルはそのままに将来的な機能拡張にはペリフェラルバーを交換するだけで対応できるようになっている。20年以上の運用が想定される機内エンターテインメントシステムとして低コスト運用につながる設計といえるだろう。
そしてSAF(Sustainable Aviation Fuel)の利用が義務化されるなど、CO2排出量削減が強く求められる航空機において機体の軽量化は極めて重要な要素だ。Astrovaは、従来製品と比べてシステム重量で最大約30%の軽量化を実現しており、航空機のCO2排出量削減に大きく貢献するという。
Astrovaは既に受注を開始している。2024年3月には門真のアビオニクス ビジネスユニットで出荷式を行い、同年12月には初搭載機であるアイスランド航空の「A321LR」への納入を完了している。
成長事業に位置付ける機内Wi-Fiサービス事業では、これまでも提供してきたGEO(静止軌道)衛星を用いる通信サービスだけでなく、より高速の通信が可能なLEO(低軌道)を用いる通信サービスへの対応を進めている。広域をカバーするGEOと、200Mbpsなどの高速な通信が可能なLEOの両方に対応するアンテナを1つのドーム内に組み込んだ上で、ビームフォーミングにより機内を広範囲にカバーするWi-Fi通信のモジュールは薄さ10cmのパッケージに収めているという。なお、OneWebを採用するLEO対応の通信サービスは2025年内に開始する計画である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.