フルMVNOの強者連合が誕生、丸紅とソラコムが通信事業の新会社を設立:製造業IoT(2/2 ページ)
丸紅と同社グループの丸紅I-DIGIOホールディングス、ソラコムの3社は2025年5月12日、東京都内で会見を開き、丸紅とソラコムのIoT領域における戦略的協業の一環として、ソラコムと丸紅I-DIGIOによる通信事業の新会社を設立すると発表した。
新会社設立はソラコムからの提案がきっかけ
新会社における補完関係はマルチキャリアのフルMVNO事業者となることだけにとどまらない。まず、ソラコムと丸紅ネットワークソリューションズのMVNO事業が持つインフラ設備を連携させることで事業規模をスケールさせやすくなる。「例えば、モバイルワーカー向けのデータ通信サービスは下り、IoT回線では上りの方が通信量が多いが、両社の連携によって上りと下りのバランスを取りやすくなる」(玉川氏)という。また、ソラコムはインフラ設備の多くをクラウド上のソフトウェアで実現しており、この技術を新会社のインフラ設備にも取り入れることで柔軟性を高められる。さらに、ソラコムはSoC(System on Chip)にソフトウェアベースでSIMを組み込める次世代SIMの「iSIM」を開発しており、新会社もこのiSIMを活用できるようになる。
丸紅ネットワークソリューションズのMVNO事業が展開するモバイルワーカー向けのデータ通信サービスでは、ネットワークとセキュリティ機能を一体で提供するSASE(Secure Access Service Edge)をソラコムの技術を基に開発することを検討している。また、小容量が中心だったIoT通信も近年では映像データを扱うなど大容量化が進んでいるが、モバイルワーカー向けのデータ通信サービスも手掛ける丸紅ネットワークソリューションズのMVNO事業は大容量化への対応力も高いという。
総合商社である丸紅は10の部門を持ち、国内外にさまざまな事業資産と分厚い顧客基盤を有していることが強みとなっている。丸紅 執行役員 情報ソリューション部門長の藤永崇志氏は「総合商社の顧客が抱えるさまざまな課題を解決していく上でIoTが果たす役割は非常に大きいと考えている。新会社の設立を契機に、丸紅グループ全体としてソラコムとイノベーションを創り出していきたい」と意気込む。
丸紅とソラコムは「IoTコンサルティング」と「海外IoTビジネス」で協業を検討していく方針である。
まずIoTコンサルティングでは、丸紅傘下で2021年に発足したDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングファームであるドルビックスコンサルティングとソラコム、それぞれの強みを生かしてさまざまな産業向けにIoT活用に関する提案を進めていく。ドルビックスコンサルティングが得意とするのは、150人のプロフェッショナルコンサルタントによる全体設計などの上流コンサルだ。一方、ソラコムは顧客の現場課題をIoTで解決するためのノウハウを蓄積しており現場の技術コンサルに強みがある。玉川氏は「これまでもさまざまなソリューションパートナーと現場課題を解決してきたが、本格的に上流コンサルと組むことはあまりなかった。今回の協業を通して、従来にない機会が得られると考えている」と述べる。
海外IoTビジネスの協業については、丸紅とソラコムが2025年2月に発表しており、コネクティビティからソリューションまでワンストップでの提供を目指す。想定顧客としては、物流、設備機械、発電事業、鉱業などを挙げており、今後は新会社や丸紅I-DIGIOも一体になって展開していくことになる。
なお、今回の新会社設立はソラコムからの提案がきっかけとなっている。玉川氏は「丸紅ネットワークソリューションズのMVNO事業は早い時期からIoT回線を手掛けており、一緒に事業を展開して行く上で違和感はない。互いの強みを生かした補完関係により事業をスケールしていけると考えている」と述べている。
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