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インタビュー

AIはSCMシステムに何をもたらすのかサプライチェーンを変える2つのポイント(前編)(2/2 ページ)

サプライチェーンの問題に多くの製造業が振り回される中、SCMシステムでもさらなる進化が求められている。そのカギを握るポイントの1つであるAIについて、Blue Yonder 最高イノベーション責任者のアンドレア・モーガン-ヴァンドーム氏に話を聞いた。

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SCMでAI活用を進めるための課題

MONOist SCMシステムにおいてAI活用を進めるための課題としてどういうことがあると考えていますか。

モーガン-ヴァンドーム氏 1つ目は先ほども話したような学習の土台となるデータの問題があります。1つの企業内でのデータ統合についても課題は多く残されていますが、サプライチェーンには多くの企業が関わり、それらが複雑に関連しあっているので、パートナー企業とのデータ連携をどのように実現するのかという点も大きな課題です。

 さらに、パブリックデータをどの範囲まで適用するのかという点も検討すべきポイントです。現在パナソニック コネクトとの連携でデータ基盤の開発を進めているところですが、データクラウド企業のSnowflakeとの連携などにより、さまざまなソースのデータを簡単に統合して一元的で透明性のある形でデータを扱えるようにする開発を進めています。

 2つ目は、エンタープライズレベルで業務と組み合わせた形で落とし込むことができるかどうかということです。例えば、倉庫オペレーションでのAI活用を考えた場合でも、倉庫オペレーションシステムに需要予測や意思決定の支援をすることなどが考えられます。しかし、AIを活用して業務をどう改善するのかということが決まらなければ、どういう学習データが必要になり、どういうソリューションの形にするのかということは決めることができません。こうした業務レベルへの落とし込みが難しく、AI活用を推進する課題になっていると感じています。

 3つ目は、AIにどこまで任せるのかという境界線の問題です。業務のどの部分をどこまでAIに任せるのかという線引きとバランスをどう考えるのかを整理する必要があります。AIは学習によって変化する存在でもありますので、これが定義できていないとコントロールできない状況になりかねません。倫理的な問題もあり、AIとの関係性をどう考えるのかは各企業にとって重要だと考えています。

複数企業横断でAIを活用しサプライチェーン全体の最適化へ

MONOist 今後のAI活用の展望についてどう考えていますか。

モーガン-ヴァンドーム氏 1つはAIエージェント機能の継続的な改良を進めることです。サプライチェーンオペレーションの自動化を目指し、支援できる領域を増やしていきたいと考えています。AIを活用することで倉庫オペレーションを効率化でき、サステナビリティにも貢献します。

 そのためにカギとなる技術が、データ統合関連の技術と、リアルの世界とのデータの結び付きを強めるためのIoT(物のインターネット)センサー関連技術だと考えています。とにかくサプライチェーンには関わるデータ主体が多いために、データをより簡単に統合して使えるようにすることは重要です。IoTセンサーによるリアルタイム情報などもその1つですが、こうしたデータ活用のハードルを下げていくことがポイントの1つだと考えています。

 将来的には複数企業横断でAIを活用するような仕組みなども描いています。サプライチェーン全体として見た場合、トータルで最も効率的な運用になるように、AIが判断するようなことも可能となります。枠組み作りが難しい面もありますが、これらを視野に入れた技術開発などを進めていきます。

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「NRF 2025 Retail's Big Show」でのBlue Yonderの展示

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≫その他の「サプライチェーン改革」の記事はこちら

(取材協力:パナソニック コネクト)

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