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米国非関税障壁に関する指摘とBYD超急速充電システムへのCHAdeMO規格の見解は和田憲一郎の電動化新時代!(56)(3/3 ページ)

中国を除いてEVシフトの伸びが鈍化し、米国の第2次トランプ政権が日本の非課税障壁について圧力を高める中、日本発の急速充電規格である「CHAdeMO」の標準化を進めるCHAdeMO協議会は、今後どのような方針で活動を進めていくのであろうか。

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中国BYDの超超急速充電システムとChaoJiの関係

和田氏 BYDから、5分で充電可能な超超急速充電システム「油電同速」が公表されている。また、新型「フラッシュチャージバッテリー」で最大1000Aの充電電流と10Cの充電レートを実現し、中国全土で4000カ所以上のMW級フラッシュ充電ステーションを展開すると公表している。これに対して、中国のChaoJiはどのような関係となるのか。

図3
図3 BYDの超超急速充電システム「油電同速」[クリックで拡大] 出所:BYD

姉川氏 BYDの新しい充電システムついては、まだよく分かっていない。なお、充電電流が最大1000Aとのことであるが、ChaoJiでも最大900Aまでは対応可能であり、ChaoJiが使われることも考えられる。また、BYDだけが特殊な充電規格を採用しても、他の自動車メーカーが追随しなければ普及は難しいのではないか。本件については、一度関係者にヒアリングしてみたい。

電動アシスト自転車向け充電規格の動向

和田氏 電動アシスト自転車(EPAC)向けの充電規格では、充電ステーション方式もしくは卓上充電器、どちらが主流となるのか。また、「共用充電器」の採用に関し、EUにおける改正エコデザイン規則(案)を統一しようとした動きがあったが、現状はどうなっているのか。

箱守氏 残念ながら関係団体の思惑が錯綜し、共用充電器の仕様統一には至っていない。もうしばらく時間を要するのではないか。

図4
図4 電動アシスト自転車「EPAC」とは 出所:CHAdeMO協議会

V2G/V2Hについて

和田氏 CHAdeMO協議会では、V2G(Vehicle to Grid)/V2H(Vehicle to Home)についてもかなり力を入れている。日本以外でV2G/V2Hを採用する動きはあるのか。

箱守氏 他のCCSグループも検討しているようだが、V2G/V2Hを正式に規格化しているところはCHAdeMO規格以外にない。テスラは、自ら蓄電池パワーウォールを販売していることもあり、V2G/V2Hへの関心は低かったようだが、今後は方針が変わることもあり得る。米国フォードなども、CCSとして統一された規格を待たず、独自規格のV2G/V2Hを開発しているようだ。

CHAdeMOの広報活動について

和田氏 今後、充電インフラを拡大するために、CHAdeMOとしてどのような広報活動を考えているか。

箱守氏 最近では、JICA(国際協力機構)の紹介により研修で海外から来日された方々にCHAdeMOの紹介をしている。またChaoJiについては、中国と協力してASEAN諸国に紹介を続けている。CHAdeMO協議会としては、充電の信頼性、安全性が高いことを継続してPRして行きたい。

取材を終えて

 冒頭、第2次トランプ政権による非関税障壁について触れたが、考えてみると、日本ではほぼCHAdeMO規格の急速充電器が設置されており、多様な車種にも充電できることから補助金なども交付されているのであろう。米国から輸入されているBEVは主にテスラの車両であり、同社のスーパーチャージャーはテスラ車にしか充電できないことから、汎用性を欠くという観点であろうか。いずれにしても、第2次トランプ政権による指摘は無理筋のように思える。

 それと一点気になったのは、ChaoJi規格採用へのためらいである。中国では既に急速充電器が120万台を超えており、現地の自動車メーカーからすれば全てGB/T規格で対応している状況の中、ChaoJi規格が新たに定まったとしても対応する急速充電器も少ないこともあり採用をためらっているのではないだろうか。以前に1つの国で2つの規格はなかなか両立しにくいと聞いたことがある。ChaoJiもそのような状態に陥っているのではないか。

 急速充電規格は、北米NACS、欧州CCS2、中国GB/T、日本CHAdeMOと既に地域別ですみ分けができており、まだ不透明なのはASEAN諸国、アフリカ、中南米などである。規格の勢力争いもあると思うが、まずは現在の地域でユーザーの満足度を上げていくことが規格の継続に繋がっていくように思えてならない。

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。


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