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時代の変化に対応できない企業は倒産前に輝くといわれているが和田憲一郎の電動化新時代!(52)(1/3 ページ)

ビジネスの教科書によく出てくる「時代の変化に対応できない企業は倒産する前に一時的に輝く」という現象を思い出す。時代の変化に対応できなかった企業例として、イーストマン・コダックが挙がることが多い。同じことが日系自動車メーカーにも当てはまる恐れはないのだろうか。

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 日系自動車メーカーの2023年度決算は絶好調で、ほとんどが過去最高の増収増益を記録した。しかし、脚下照顧ではないが、冷静に世界情勢を見てみると、必ずしも世界の最先端を行っている状況にない。むしろ、収益の多くは歴史的な円安によってもたらされている。円高によって逆回転が始まる可能性もある。

 そのようなとき、ビジネスの教科書によく出てくる「時代の変化に対応できない企業は倒産する前に一時的に輝く」という現象を思い出す。時代の変化に対応できなかった企業例として、イーストマン・コダック(以下コダック)が挙がることが多い。同じことが日系自動車メーカーにも当てはまる恐れはないのだろうか。筆者の考えを述べてみたい。

→連載「和田憲一郎の電動化新時代!」バックナンバー

2024年上半期の実績は

 2024年2月、『EVシフトの伸び悩み期間「プラトー現象」を乗り越えるには』という記事を掲載した。急激なEV(電気自動車)シフトに対して、やや揺り戻しが起きているのではと感じたからだ。2024年上半期が過ぎた現在、実績を見てみると、日本を除いてはそれほど伸び悩みとなっておらず、むしろ堅調ともいえる。

 最初に、直近の数値を確認しておきたい。不動産不況などいろいろ報道されている中国だが、中国自動車工業協会によれば、2024年上半期の新エネルギー車販売台数は494万台だ。前年同期比で32%増、新車販売に占める比率は35%に達している。

 また、米国の場合、モーターインテリジェンスの報道によれば、新エネルギー車は上半期全体で76万台(前年同期比10%増)、新車販売比率が10%となっている。これはテスラの販売減少とHEV(ハイブリッド車)増加が対比されて報道されることが多いが、テスラ以外のEVメーカーも健闘しており、実態はそれほど悪くないようだ。また欧州自動車工業会(ACEA)によれば、2024年上半期の新エネルギー車販売は110万台、対前年比でほぼ同等、新車販売比率19%で推移している。

 一方、日本では、登録車と軽自動車を合わせたEVとPHEV(プラグインハイブリッド車)の販売は5万台。前年同期比30%減、新車販売比率は2.3%となっている。このため、上半期を見れば、日本を除いて欧米中とも増加しており、伸び悩み期間である「プラトー現象」というより、むしろ全体的に堅調といった方が適切だろう。

コダックの事例では

 一方、不安な面も見えてきた。それは日系自動車メーカーのスタンスについてである。日系自動車メーカーはエンジン車やHEVなどで行けるところまで行き、その後、PHEVやEVに次第に比重を移そうと考えている節がある。しかし、2024年も新エネルギー車は日本を除き、世界的に堅調だ。中国ではBYDを筆頭に新エネルギー車の価格破壊が起き、新興メーカーは淘汰(とうた)されている。エンジン車やHEVを主力とする日系自動車メーカーも大打撃を受け、減産や工場閉鎖を余儀なくされている。

 さらに、ASEAN諸国においても、中国自動車メーカーがタイやインドネシアにEV工場を建設するなど、果敢な攻勢に出ている。そのような状況の中、筆者の懸念は変化の時間軸を後ろに置こうとしているスタンスだ。このままで良いのだろうか。

 ビジネスの教科書では、時代の変化に対応できなかった企業としてコダックが代表例として挙げられることが多い。ここで、少し、コダックについて触れてみたい。一般的に言われているのは、銀塩フィルムからデジタルカメラに時代が変わるとき、コダックの経営陣はフィルム業界にしがみついた結果、コダックは1999年に過去最高の売上高と利益を出すものの、その後次第に低迷し2012年に倒産した(コダックは、連邦倒産法第11章の適用を受けて2012年に倒産後、2013年には事業規模を大幅に縮小した。その後、連邦倒産法第11章の適用を脱する計画について裁判所から承認を得て、企業再生している)。

 これはハーバード・ビジネス・スクール 教授のクレイトン・クリステンセン氏が2001年に「イノベーションのジレンマ」を発刊した後にコダックが倒産したことから、この本には直接書かれていないものの、「イノベーションのジレンマ」の実例としてよく引き合いに出される。

 しかし、上記は必ずしも正確ではないという声も多い。コロンビア大学ビジネススクールの教授リタ・マグレイス氏やダートマス大学タックスクール・オブ・ビジネスの教授ロン・アドナー氏などは異なる意見を表明している。彼らは、結論として、コダックはデジタル化に遅れたのではなく、デジタル化への方向付けが間違っていたのでないかと主張している。

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