中国の市場激化やタイの市場低迷が響く、乗用車8社の新車生産:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
2025年2月の日系自動車メーカーの生産は、1月に続きメーカー各社によって明暗が分かれた。トヨタ自動車やダイハツ工業が2024年の認証不正問題の反動などで、SUBARU(スバル)も2024年が死亡事故で稼働停止した反動により大幅にプラスとなった。一方で、中国や東南アジアの低迷などにより日産自動車や三菱自動車などが大きく減少した。
日産自動車
8社の中で最も低迷したのが日産だ。2月のグローバル生産は、前年同月比12.1%減の23万7982台と9カ月連続のマイナス。8社の中では唯一の2桁パーセント減で、順位ではホンダに次ぐ4位だった。このうち国内生産は、同13.2%減の5万2198台と12カ月連続のマイナス。北米の主力モデルである「エクストレイル/ローグ」やEV「アリア」の台数減が響いた他、国内販売でもエクストレイルや「ノート」が大幅マイナスとなっている。輸出も同11.6%減と低迷し、4カ月連続で前年実績を下回った。
海外生産も伸び悩み、前年同月比11.7%減の18万5784台と9カ月連続で前年実績を下回った。米国は「アルティマ」やローグなどの台数減により同21.4%減と10カ月連続のマイナス。一方、メキシコは新型「キックス」が増加したことで同7.2%増と2カ月連続で増加した。販売競争が厳しい中国は「シルフィ」の減少で同35.6%減と低迷が続いており、9カ月連続のマイナス。英国も「リーフ」の生産終了や「キャシュカイ」の減少により同12.8%減と9カ月連続で減少した。
ダイハツ工業
8社の中で最も大きな伸びを示したのがダイハツだ。2月のグローバル生産は、前年同月比76.8%増の12万7894台と大幅に増え、3カ月連続のプラス。これは前年の国内生産が認証不正問題により7000台に満たなかったためで、国内生産は同9.3倍の6万2350台と2カ月連続で前年実績を上回った。内訳は軽自動車が同5.5倍の4万3518台、登録車は前年同月が0台だった。
海外生産は、前年同月比0.2%減の6万5544台と微減で、2カ月連続で減少した。マレーシアは同3.7%増と2カ月ぶりに増加し、2月として過去最高を更新。ただ、インドネシアは同3.4%減と伸び悩み19カ月連続のマイナスだった。
マツダ
マツダの2月のグローバル生産台数は、前年同月比4.6%減の9万5563台と2カ月ぶりに減少した。主力の国内生産が同8.4%減の6万139台と2カ月ぶりに前年実績を下回ったためだ。「マツダ3」は同7.3%増と増えたものの、主力車種の「CX-5」は同14.7%減と低迷。「CX-30」も同9.8%減と落ち込んだ。輸出も欧州向けが同32.3%減と大幅減となり、トータルでは同8.1%減にとどまった。
一方、海外生産は、前年同月比2.4%増の3万5424台と2カ月連続で前年実績を上回った。このうち北米は、メキシコが「マツダ2」や「CX-3」の増加で同4.2%増と2カ月連続のプラスとなった他、「CX-50」の販売が堅調な米国は同30.0%増と伸長した。一方、タイはCX-3の減少で同25.0%減と4カ月連続のマイナス。中国も新型EV「EZ-6」の生産が開始されたが、マツダ3やCX-5の減少により同29.5%減と大幅減となり、8カ月連続で前年実績を下回った。
スバル
スバルの2月のグローバル生産は、前年同月比34.2%増の8万489台と4カ月ぶりにプラスへ転じた。前年同月に矢島工場(群馬県太田市)で崩れた金型に男性社員が挟まれて死亡する事故が発生し、矢島工場の他、本工場(同)と大泉工場(群馬県大泉町)も稼働を停止。その反動増により国内生産は、同116.1%増の5万1297台と4カ月ぶりのプラスだった。これに伴い輸出も同25.4%増と6カ月ぶりに増加した。
一方、唯一の海外生産拠点である米国生産は、前年同月比19.5%減の2万9192台と4カ月連続で減少。8社の海外生産では最も大きな落ち幅となった。要因は前年が半導体不足の挽回生産で高水準だったため。現在は適正在庫に向けて生産を調整しており、スバルでは生産台数自体は「おおむね計画通り」としている。
三菱自動車
厳しい状況が続いているのが三菱自動車だ。2月のグローバル生産台数は、前年同月比9.6%減の7万9002台と13カ月連続のマイナス。8社の順位でもスバルを下回り最下位となった。特に海外生産が低迷しており、同13.5%減の3万6312台と4カ月連続で減少した。主要地域である東南アジアは、最大拠点を構えるタイが経済低迷やローン審査の厳格化などにより依然として市況は厳しく、同43.6%減と大幅減を記録。「ミラージュ」の生産を終了したのも響いた。一方、インドネシアは輸出向け「エクスパンダー」の増産により同66.9%増と大きく伸長した。それでもアジアトータルでは同13.0%減という状況だ。
国内生産も冴えない。前年同月比6.1%減の4万2690台と7カ月連続で減少した。国内市場向けの「デリカD:5」や「アウトランダーPHEV」は好調だったが、前年に投入した「デリカミニ」が一巡して2桁パーセント減となったことに加えて、日産向けOEM(相手先ブランドによる生産)供給するEV「サクラ」や「ルークス」「デイズ」などが軒並み低迷した。輸出は北米や欧州向けが回復し、同5.0%増と2カ月連続のプラスだった。
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