NEC、顔情報を保存しない顔認証技術などセキュアながんワクチン製造フロー確立:製造ITニュース
NECは、個別化がんワクチン製造のワークフローにおいて、患者の顔情報を保存しない顔認証技術やトレーサビリティー保証技術、機微情報を少ないデータで管理できる技術を開発した。
NECは2025年4月1日、個別化がんワクチン製造のセキュアなワークフローを可能にする技術を開発したと発表した。患者の顔情報を保存しない顔認証技術やトレーサビリティー保証技術、個人情報など機微情報を少ないデータで管理でき、社内実証に成功した。
開発した技術には、顔画像の特徴量の情報を鍵情報に変換して本人認証する、同社の「生体情報利用デジタル署名技術」を活用。患者の顔情報を保存せずに鍵情報での認証が可能で、顔情報の漏洩(ろうえい)リスクや悪用リスクを抑えながら、患者へのワクチン投与の確実性を向上できる。
また、生成するデジタル署名により、ワクチン投与時の患者確認が正しく実施されたかをトレース(事後検証)できる。
患者のゲノムデータから設計、作成する個別化がんワクチンは、ゲノムデータの真正性の担保が重要となる。同社では、ゲノムデータをグループ化して検査用タグデータを付与し、必要なタグデータの個数を削減する改ざん検知技術を開発。全てのゲノムデータにタグデータを付与する場合と同レベルの改ざん検知精度を保ちつつ、検査用タグデータの量を10分の1に削減できる。これにより、ゲノムデータの真正性の担保と検査用タグデータの保管コスト低減を両立した。
個別化がんワクチンの運用を想定した環境を社内に構築し、実証実験を実施したところ、ワクチン投与前に患者や検体の取り違えを正しく検知できた。ゲノムデータが改ざんされた場合にも、検知できることを確認している。2025年度以降には、社外実証により有用性と課題を検証する予定だ。
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