高性能ナイトビジョンに用いられるカルコゲナイドガラス、40mm以上の大型化に成功:材料技術
東海エンジニアリングサービスは、自動車の夜間視認カメラ(ナイトビジョン)やセキュリティ/監視システムに用いられるサーモグラフィーカメラなどに最適な特性を持つカルコゲナイドガラスについて、直径40mm以上に大型化できる製造技術を開発した。
東海エンジニアリングサービスは2025年4月16日、自動車の夜間視認カメラ(ナイトビジョン)やセキュリティ/監視システムに用いられるサーモグラフィーカメラなどに最適な特性を持つカルコゲナイドガラスについて、直径40mm以上に大型化できる製造技術を開発したと発表した。
カルコゲナイドガラスは、可視光から遠赤外線となる最大14μmまでの波長の光を高い透過率で透過することを特徴としている。これにより、赤外線カメラにカルコゲナイドガラスを適用することで高い視認性を持つ撮像が行える。
金型を用いたプレス成形が可能なカルコゲナイドガラスだが、一般的なガラスと比較して強度が低く、特に温度変化に敏感といわれている。このため、直径10mm以上の大型レンズを割れずに成形することが技術的に困難なことが課題になっていた。
東海エンジニアリングサービスは、京都府の開発補助事業「エコノミックガーデニングI」の補助金を活用し、産業技術総合研究所の支援も受けることで、ガラスの物性データ取得と詳細なシミュレーションを実施した結果、カルコゲナイドガラスの割れを防止する成形条件の確立に成功した。
さらに、カルコゲナイドガラスを成形する際には、特有のガス発生や温度差による破損も起こり得る。これを防ぐための複雑な温度サイクル制御を実現するため、京都府の開発補助事業「エコノミックガーデニングII」の補助金を活用して最適な成形条件を精密に再現できる専用装置の開発に着手。2024年12月に完成した専用装置を用いた試作では、従来の技術的限界を大きく超える直径50mm近いレンズの成形に成功している。
このカルコゲナイドガラスの大型化に向けた研究開発は、入社3年目(当時)の若手エンジニアが中心になって進めたという。
なお、東海エンジニアリングサービスは「OPIE'25」(2025年4月23〜25日、パシフィコ横浜)に出展し、直径50mmの大型カルコゲナイドガラスレンズを展示する予定だ
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