霧ヶ峰も採用する三菱電機の赤外線センサー「MelDIR」の検知面積が2倍以上に:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
三菱電機は、人や物の識別、行動把握を高精度に行えるサーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR」の新製品として、検知面積を従来比で2倍以上に拡大した「MIR8060C1」を開発した。一般的な住宅の居間など広さ12畳の部屋全体を検知できるようになったという。
三菱電機は2024年10月24日、東京都内で会見を開き、人や物の識別、行動把握を高精度に行えるサーマルダイオード赤外線センサー「MelDIR(メルダー)」の新製品として、検知面積を従来比で2倍以上に拡大した「MIR8060C1」を開発したと発表した。これまで検知面積に関わる画角は78×53度だったが、MIR8060C1は100×73度となったことで、一般的な住宅の居間など広さ12畳の部屋全体を検知できるようになったという。主に、高齢者施設での見守りやスマートビルでの人数カウントなどの用途に向ける。発売は2025年1月6日の予定。価格は個別見積もりだが、画角78×53度の従来品と比べて数十%の価格アップに収めるとしている。
三菱電機 半導体・デバイス事業本部 半導体・デバイス第二事業部 事業部長の盛田淳氏は「MelDIRは、カメラなどの高価な機器を使わずに高精度なセンシングができる独自のセンサーとして2019年から展開してきた。照明のオンオフに用いられる焦電センサーやサーモパイルなどのシンプルな赤外線センサーと、高価な赤外線カメラの中間に位置する市場を開拓しており、現時点グローバルの市場規模は100億円、2030年には270億円に拡大すると見込んでいる。今回の新製品により、顧客が求めていた検知面積の拡大という要望に応えられる」と語る。
焦電センサーやサーモパイルなどの画素数で8×8以下の赤外線センサーは、価格が100〜1000円と安価ではあるものの、人や物の識別、行動把握まで行うには情報量が少なすぎる。画素数で160×120以上のボロメーターなどを使う赤外線カメラであれば可能だが、価格は1万円以上と高価になってしまう。MelDIRは、ダイオードの特性である温度依存性を利用して温度情報を電気信号に変換するサーマルダイオードを基に三菱電機が独自に開発したセンサーで、人や物の識別、行動把握を高精度に行える80×60の画素数を備え、価格は数千円台と赤外線カメラよりも安価に抑えている。
MelDIRのサーマルダイオードはシリコンダイオードなどの半導体部品を用いることで安定性と均一性が高く、CMOSプロセスを用いて80×60の高画素化を実現した。また、サーマルダイオードが赤外線による温度変化を効率良く検知するには画素周辺を真空にすることが求められるため、チップスケールパッケージに基づく独自開発の真空封止パッケージを採用し、小型化も実現している。
これまでのMelDIRの代表的な採用事例となるのが、三菱電機のルームエアコン「霧ケ峰」のセンサー機能「ムーブアイmirA.I.+」だ。また、三菱電機インフォメーションシステムズの「AI×見守りサービス kizkia-Knight」にも採用されている。
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