携帯電話を活用したデジタル接触追跡技術を組み合わせ、アプリの実用性向上:医療技術ニュース
北見工業大学と東京大学は、携帯電話を活用した2つのデジタル接触追跡技術を比較し、これらを感染状況に応じて使い分けることで、接触追跡の実用性を高める方策を発表した。
北見工業大学は2025年3月25日、携帯電話を活用した2つのデジタル接触追跡(DCT)技術を比較し、これらを感染状況に応じて使い分けることで、接触追跡の実用性を高める方策を発表した。東京大学との共同研究による成果で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染対策において、接触追跡アプリの実用性向上が期待される。
対象としたのは、Bluetooth Low Energy(BLE)方式とComputation of Infection Risk via Confidential Locational Entries(CIRCLE)方式の2つだ。BLE方式は、アプリをインストールして有効化している人同士のみ接触を検知できる。CIRCLE方式は、携帯電話基地局の接続情報を活用し、アプリのインストールは必要としない。
日本における各種データを用いて、BLE方式とCIRCLE方式の感度や特異度を比較したところ、CIRCLE方式はBLE方式の最大7倍以上の感度を持つことが分かった。BLE方式はアプリ利用者のみが対象となるため、接触検知性能の指標となる感度が低くなることが原因と考えらえる。
一方で、誤検知の少なさの指標となる特異度は、BLE方式は99.9%と高かった。CIRCLE方式は感度が85.6%と高いものの、感染者数が増えると特異度が低下し、感染者数の人口比が1%時点で特異度は38.6%にとどまった。
日本では新型コロナのパンデミック時に、BLE方式のアプリ「COCOA」が導入された。しかし、アプリ利用者が増えなければ接触検知効果が十分に発揮されないこと、感染拡大の経路として学童や高齢者の影響を無視できないこと、また正確な評価のためのデータが不足していることなどから、感度の低さは検討すべき課題だった。
そのため、感染者が少ない初期段階は感度が高いCIRCLE方式を活用し、感染拡大後はBLE方式を併用することで、バランスの取れたDCTシステムが構築できる。異なる特性を持つ2つの技術を組み合わせ、プライバシーを考慮しつつ感度を高めるというDCTの最適設計に重要な示唆が得られた。
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