胃カメラをしながら膵がんを早期発見できる診断法を開発:医療技術ニュース
大阪大学らは、胃カメラの際に追加検査することで、早期膵がんを高精度に診断できることを発見した。十二指腸乳頭部を洗浄し、その回収液中のKRAS遺伝子変異を検出する。
大阪大学は2025年2月20日、胃カメラの際に追加検査することで、早期膵がんを高精度に診断できることを発見したと発表した。国立がん研究センターらとの共同研究による成果で、十二指腸乳頭部を洗浄し、その回収液中のKRAS遺伝子変異を検出する。
KRAS遺伝子の変異は、ほぼ全ての膵がんにおける最初の遺伝子異常であり、膵がんの直接的なバイオマーカーとして機能する。今回の研究は、健康者75人と初診時手術適応膵がん患者89人を対象に、大阪大学が全国の10施設と協力して実施した。
通常の胃カメラの際に膵液の分泌を促す合成ヒトセクレチンを静脈投与し、膵管の出口である十二指腸乳頭部を専用カテーテルで洗浄して、十二指腸内にたまった洗浄液を回収した。回収液からDNAを抽出しKRAS遺伝子の変異を調べたところ、膵がん患者では健康者に比べて有意にKRAS遺伝子変異が多かった。
健康者と手術適応膵がん患者を特異度100%、感度80.9%で分けられ、AUC(Area Under the Curve)は0.912と1に近いことから、極めて精度の高い検査法であることが判明した。一方、これまで膵がんの腫瘍マーカーとして利用されてきたCEAとCA19-9のAUCは、それぞれ0.629、0.701と低かった。
これまで膵がんの早期発見可能なスクリーニング法はなく、CEAやCA19-9も偽陽性があり手術適応膵がんの発見は困難とされている。
今回開発した手法は、通常の胃カメラ検査に1〜2分追加することで検査が可能だ。日本では2年に1回の胃がん検診を推奨しており、特に胃カメラが推奨されている。その際に本検査を追加することで、膵がんの早期発見、早期治療が期待される。
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