ホンダの次世代燃料電池モジュールはどうやって容積出力密度3倍を実現したのか:第23回 SMART ENERGY WEEK【春】
ホンダは、「H2&FC EXPO【春】〜第23回 水素・燃料電池展〜」において、2027年度に量産開始予定の次世代燃料電池モジュールを披露した。現行モデルと比べて製造コスト半減、耐久性2倍以上、容積出力密度3倍以上となるなど、大幅な性能向上を果たしている。
ホンダは、「第23回 SMART ENERGY WEEK【春】」(2025年2月19〜21日、東京ビッグサイト)内の「H2 & FC EXPO【春】〜第23回 水素・燃料電池展〜」において、2027年度に量産開始予定の次世代燃料電池モジュールを披露した。現行モデルと比べて製造コスト半減、耐久性2倍以上、容積出力密度3倍以上となるなど、大幅な性能向上を果たしている。
今回展示した次世代燃料電池モジュールはホンダのFCV搭載モデルとして第3世代に当たる。初代モデルは2016年発売の「CLARITY FUEL CELL」向けでホンダの独自開発だった。これに対し第2世代の現行モデルは、GM(General Motors)と共同開発しており、2024年発売の「CR-V e:FCEV」に搭載している。
第3世代の次世代燃料電池モジュールは再びホンダの独自開発となった。最大出力は150kW、出力電圧は450〜850Vで、最大効率(Net)は59.8%。外形寸法は幅730×奥行き580×高さ700mm、容積は300l(リットル)となるので、容積出力密度は0.5kW/lである。
なお、現行モデルの燃料電池モジュールは、最大出力は78kW、出力電圧は275〜600Vで、最大効率(Net)は56.8%。外形寸法が幅1070×奥行き738×高さ705mmで容積は557lとなり、容積出力密度は0.14kW/lである。つまり、次世代燃料電池モジュールは、容積出力密度で現行モデルの約3.57倍という大幅な進化を遂げていることになる。
容積出力密度の大幅な進化に貢献した技術は大まかに分けて2つある。1つは燃料電池セルを中心とした発電部の改良だ。燃料電池スタックの大板化で出力を高めるとともに、補器類を機能統合して集積化することで小型化を果たしている。もう1つは、エアーの配管を効率的に配置するパッケージングの工夫である。「燃料電池モジュールでは、発電に必要な空気を取り込むためのポンプやインタークーラー、加湿器などが必要でこれらを複数の配管でつないでおり、複雑なプラントのようになっている。ホンダは自動車の設計開発でも効率的なパッケージングを得意としており、次世代燃料電池モジュールの開発でもその知見とノウハウを生かしてコンパクトにまとめることができた。なお、無理に詰め込むというやり方でなくメンテナンス性も考慮している」(ホンダの説明員)という。
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