イーディーピーは2025年2月13日、30mm角の大型ダイヤモンド単結晶基板を発売すると発表した。
ダイヤモンドヒートシンクの低コスト化にも貢献
同社は、大型のダイヤモンド単結晶を製造できることを強みに、この単結晶を人工ダイヤモンド宝石製作用種結晶や基板、光学部品などに適用してきた。同社が販売している大型ダイヤモンド単結晶のサイズは15×15mmが最大で、これより大きいサイズは複数個の単結晶を接合するモザイク結晶で供給していた。
しかし、半導体デバイスの量産には2インチ(50mm)以上のウエハーが必要で、そのニーズに応える大型ダイヤモンド単結晶が多くのユーザーから求められている。
こういった状況を踏まえて、同社は2025年3月期中間期決算説明資料で2インチウエハー開発についてのロードマップを示した。ロードマップではまず25×25mm以上の単結晶ダイヤモンド単結晶を開発する旨の方針を掲げている。今回このロードマップに沿った開発が進展し、30×30mm以上のダイヤモンド単結晶の開発に成功した。これを使って30x30mm以下のダイヤモンド単結晶基板を発売する。
この大型ダイヤモンド単結晶を親結晶として使用して、イオン注入による分離技術によって同サイズの単結晶を量産する。半導体デバイス開発用に発売する単結晶基板はサイズが15×15〜30×30mmで、厚さは0.05〜3mm。面方位は3度程度のオフ角がある100面で、窒素含有量は8ppm以下、X線ロッキングカーブ半値幅は20〜80arcsecの範囲(従来品と同程度)だ。
また、単結晶ダイヤモンドは物質中最も高い熱伝導率を有しており、半導体デバイスなどからの発熱を除去するヒートシンクとしての利用が期待されている。これにより大型のウエハーが製造できることで、ダイヤモンドヒートシンクの低コスト化が実現できると予想され、その適用範囲の拡大が期待される。
今後について
同社はこの大型単結晶を使って直径25mmの1インチウエハーを2025年4月末目標に発売する計画を立てている。これまで販売していたハーフインチウエハー(直径12.5mmの円形)に比べ、4倍の面積があるため、より多数の半導体デバイスを1つのウエハーで製作可能だ。1インチウエハーとして、表面の粗さやうねりなどの形状、エッジ形状を含む各種のウエハー仕様を確定するために、2025年4月末の発売を目標に開発を継続していく。
さらに、2インチウエハー(直径50mm)の開発に向けて、開発した単結晶を4個接続する50×50mm以上の面積を持つモザイク結晶の開発を進め、2025年12月末までには2インチウエハーの商品化を計画している。2インチウエハーに対応した半導体デバイス製造装置は現在利用が可能で、微細加工などの半導体デバイスに必要な製造プロセスを容易に使えるようになる。
単結晶サイズを50×50mmまで大型化し、2インチ単結晶ウエハーを実現するための開発には今後2〜3年かかると見込んでいる。
50×50mm以上の単結晶を開発できれば、それを4個接続することによって4インチモザイクウエハー(直径100mm)を作れる。同社は現在の半導体製造プロセスの状況を踏まえ、ダイヤモンドデバイスの本格的な量産にはこの4インチモザイクウエハーが必要だと考えている。
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