電気自動車にも搭載可能な効率95%以上のモーターの開発に成功:電動化
工学院大学と同大学発のベンチャーであるマグネイチャーは、1000回転〜15000回転の全領域において効率95%以上で、電気自動車にも搭載可能な出力64kW級モーター「MagNach」を開発した。
工学院大学と同大学発のベンチャーであるマグネイチャーは2025年1月21日、1000〜15000回転の全領域において効率95%以上かつ超静音性で、電気自動車にも搭載可能な出力64kW級モーター「MagNach」を開発したと発表した。
これまでのモーターのコア(コイルが巻かれる鉄心)をなくし、コアレスにすることで軽量化を可能とした。加えて、コアレス化で鉄心の鉄損と磁気飽和による出力の限界をなくすことで効率性も向上した。また、コアレス化のトルクが小さくなるデメリットを解消するためにハルバッハ配列を用いることで最適配列を開発した(特許取得)。その結果、コギング、トルクリップルの発生を抑制し、振動騒音ロスもなくなり超静音性を獲得できた。同モーターは、全回転領域において、効率95%以上を達成し、制御レスポンスが高く小型化も可能とした。
同モーターの開発において、世界で初めてコイルのコアレス化とハルバッハ配列の新たな最適化を組み合わせた。モーターのコイルのコアレス化により、鉄損はなくなるがトルクが小さくなるため、これまでは電子デバイスや模型などの容量が小さい製品にコアレスモーターが用いられていた。また、磁極を交互に配列する従来のNS配列では両側に磁界が広がる。一方、ハルバッハ配列は磁極を90度ずつ回転させて配列するため、磁界を片側に集中する特性がある。
これらの結果から、電動バイクなどのミニカーEV用5kW級と、大型ドローンなどの新たなモビリティ用1kW級の開発を進める。モビリティ以外にも、小型軽量、高速回転、超低振動の特徴を活用し、工作機械用スピンドルモーターでの高精度化や家電製品用コンプレッサーによる静音化など、高性能な発電機や医療機器用への展開も予定されている。また、MagNachは、リニアモーターや真空軸受といった磁気浮上や非接触給電の技術革新への応用も期待されている。
世界全体における消費電力量の40〜50%をモーターが占めているといわれている。同大学は、今後、モビリティの電動化や自動車の進化が促進される中で、今回開発した全回転域95%の高効率モーターはSDGsに寄与するとしている。
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