リコーが“唯一無二”の複合機を開発、PFUのスキャナー技術を融合:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
リコーが新開発のA3カラー複合機「RICOH IM C6010SD」「RICOH IM C4510SD」「RICOH IM C3010SD」について説明。PFUの業務用スキャナー、リコーのA3カラー複合機というそれぞれ世界シェアトップの製品の技術を組み合わせたことを最大の特徴とする。
PFUとエトリアのシナジーによる提供価値に
SDシリーズの特徴は、大まかに「スキャン機能の革新的進化」と「ドキュメントとAIの架け橋」の2つに分けられる。
「スキャン機能の革新的進化」は、2022年7月にリコーグループの傘下に加わったPFUの業務用スキャナーの技術を盛り込むことで実現した。PFU ドキュメントイメージング事業本部スキャナー開発統括部 統括部長の本川浩永氏は「安心かつ高速にスキャン処理ができる“唯一無二”の製品を開発することができた」と述べる。
直線に近い搬送ルートとなるストレートパス構造と独自の給紙搬送技術により、多種多様な原稿を高速かつ正確に読み取ることができる。独自の給紙搬送技術は、センサーで給紙状況を感知して原稿に掛かる圧力を制御するとともに、給紙ミスや紙詰まりを低減して確実に1枚ずつ給紙/分離を行う「インテリジェント・ビッグアーム」と、音検知と原稿移動量の監視で紙詰まりを察知し、搬送を即座に停止して原稿を破損から守る「原稿保護機能」から構成されている。
スキャン機能としては、不定形サイズの帳票をまとめての一括読み取り、複写紙やカード類などの簡単読み取り、PFUの独自の給紙搬送技術基づく原稿保護機能が挙げられる。
「ドキュメントとAIの架け橋」では、複合機に組み込んだエッジAI(人工知能)アルゴリズムを活用した画像向き自動補正や、標準搭載したOCR(光学文字認識)機能の利活用によるデータ生成、リコーやPFUが提供する各種AIソリューションとの連携によって業務効率化につなげられる。
中でも画像向き自動補正技術については、要件が異なる業務用イメージスキャナーと複合機を融合するためにリアルタイムで行えるように工夫をこらした。SDシリーズのADFは、不定形サイズの帳票や複写紙、カード類などの読み取りに対応しているが、これらはサイズも向きもバラバラであり、一括読み取り時に傾くことも多い。この不定形の原稿を読み取った上で外形を自動で切り出し、位置や傾き、天地を補正するという一連の画像補正処理をエッジAIアルゴリズムによってリアルタイムに行っている。
この画像補正処理では、OCRの文字再現性低下の原因となる裏写りが起きない白い背景板でも、背景と原稿のわずかな色味の差から原稿の外形を正確に検出できるAI技術を新たに搭載した。また、一般的に文字で判断している天地補正についても、文字のない写真のような原稿でも天地判定を行える。
SDシリーズの複合機としての開発を担当したのは、2024年7月にリコーと東芝テックの出資で発足したエトリアである。エトリア 執行役員 BSP本部 OC事業センター 所長の佐藤訓之氏は「今回の新製品はPFUとエトリアのシナジーによる提供価値の一つになる。PFUがリコーグループに加わった段階から開発を進めてきた。今後もエトリアとして、リコーとPFU、そして東芝テックの技術も融合して競争力の高い複合機などのハードウェアを開発していきたい」と述べている。
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