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インダストリアルデジタルBUが日立全体のケイパビリティーを高める「のりしろ」に日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(5)(3/3 ページ)

日立の製造業としての側面を色濃く残すコネクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第5回は、CIセクターをはじめ日立の“強い”プロダクトを中核とした「トータルシームレスソリューション」の推進役であるインダストリアルデジタルBUをクローズアップする。

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ロボティクスSI事業の拡大で日本のモノづくりの強化に貢献する

MONOist CIセクターは、今後の注力分野としてバッテリー製造などを挙げています。これにインダストリアルデジタルBUはどう関わっていくのでしょうか。

森田氏 一番大事なのは、バッテリーのプロダクトライフサイクルに対してどう深く関わっていくかという視点だ。一番ホットな市場はEV(電気自動車)のバッテリーだが、それらを製造するラインビルディングではJRオートメーションが大きくコミットできている。

 ここをバッテリーというプロダクトと関わるフィジカルレイヤーとすると、次にバッテリーを自動車に組み込む制御システムとなるOTレイヤーとの関わりが出てくる。日立は自動車業界向けにMES(製造実行システム)を展開しているので、その知見を展開できるだろう。

 一方、化学品でもあるバッテリーの製造は、FAだけでなくPA(プロセスオートメーション)のノウハウも必要になる。これについては、水・環境BUの中津(英司氏。日立 執行役常務 水・環境BU CEO)とともに十分な知見を蓄えていくための方法を模索している。

 また、日立ハイテクはバッテリーの消耗度合いの状態監視や、廃バッテリーのリサイクルについても事業展開を行っている。リサイクル領域にも対応を広げることで、バッテリーの製造、使用、その後のリサイクルまで、バリューチェーン全体を通じてカバーできるようになる。

 リサイクルに関わるデジタルソリューションを提供するプラットフォームを、デジタルシステム&サービスセクター(DSS)とつながりつつ提供していければと考えている。この点で、バッテリーは日立においてクロスセクターの代表事例になりつつあるといえる。

MONOist バッテリーとともに注力分野に挙げられていたバイオ医薬製造についてはどうでしょうか。

森田氏 R&DとPAが重要になる。水・環境BU傘下の日立プラントサービスが国内で医薬品向けプラントの実績とノウハウを多数有しており、大きな強みになる。

 ただし、バイオ医薬品の培養に関するシミュレーションや製造の技術は国内にはあるが、北米での展開はまだこれからだ。JRオートメーションや日立の水・環境BUがクロスBUの体制で、事業立ち上げの本当に基礎的な部分から取り組みを進めている。

MONOist ロボティクスSI事業の足元の状況についても伺います。2024年7月に協創施設の「Automation Square HANEDA」「Automation Square KYOTO」をオープンしましたが、その狙いについてお聞かせください。

日立の森田和信氏
日立の森田和信氏

森田氏 狙いは大きく分けて2つある。1つは、日立のロボティクスSI事業の取り組みについて認知拡大を図るためだ。主要な顧客層にまだまだ浸透していないと感じるので、しっかりアピールしていきたい。

 もう1つは、今後の日本のモノづくりを強くしていく上で、ラインビルディングやロボティクス技術を共有し合うことが非常に重要だと考えているからだ。これまで製造業各社の生産技術は門外不出で、高度経済成長期はそれによって成長を遂げてきた。しかし、その体制は人手が十分に確保できることを前提にしていた。将来的な人口減少の見通しが色濃い中では、生産技術を共有し合うことが日本の製造業の競争力維持に欠かせなくなる。

 一方で、米国ではこうしたラインビルドや生産技術などのノウハウをインテグレーションする企業のマーケットが早期に立ち上がっていた。その中で成長していた1社がJRオートメーションだ。日本でも協働ロボットの導入が広がりつつある中で、人間とロボットが協働可能な環境を構築するためにロボティクスSIが必要とされているが、そうした役割を担える企業は国内ではまだあまりない。そういう意味で、ロボティクスSI事業を拡大するためにはJRオートメーションの知見をどんどん国内に導入していく必要がある。

 特に、Automation Square HANEDAは羽田空港からのアクセスが容易だ。JRオートメーションの社員が訪れて日本の顧客にその長所を伝えるという活動がしやすいし、逆にJRオートメーションの社員も日本企業ならではの考え方やプロジェクトの進め方を学ぶいい機会になる。そうした場所として今後どんどん使われていくことを期待している。

MONOist 2025年度から新しい中期経営計画が始まります。その中で、インダストリアルデジタルBUとしてはどのようなことをしていきたいと考えていますか。

森田氏 BUの成長という点で言えば、産業/流通領域のマーケットでより価値あるサイバーフィジカルシステムのソリューションを提供できるようにしていく。現状、IT/OTシステム系のソフトウェアソリューションは十分に展開できているが、サイバーフィジカルシステムにおいてそれらを支えるフィジカルレイヤーがまだまだ弱い。

 だからこそ、JRオートメーションを買収するなどの取り組みを進めてきたが、それでもまだIT/OTシステム系の方が強い。フィジカルレイヤーで強化していきたいものの一つが、ロボティクスを組み込んだラインビルドだ。労働力減少が続く中で、フロントラインワーカーにどのような価値を提供していくかが日本全体で大きな課題になる。この課題に応えるという意味でも、一丁目一番地で強化すべき領域だ。

MONOist さらなるM&Aについては検討されていますか。

森田氏 M&Aやアライアンスはあくまで手段だ。M&Aありきではなくて、次期中期経営計画に向け構築した経営、事業戦略の中で取り得るさまざまな選択肢の一つとして検討していく。

 ラインビルド領域の強化を重視しているが、インダストリアルデジタルBUがDSS(デジタルシステム&サービス)セクターや同セクター傘下のGlobalLogicとしっかりつながっていく必要もある。“クロスBU”の先の“クロスセクター”を視野に入れて、インターナルなリソースをどう活用していくかを考えることも大事だ。一方、CIセクター全体で見た時にメインで投資しなければいけないのがOT以下のレイヤーだ。われわれが率先して投資しなければ日立全体で誰も投資しない。

 CIセクターのプロダクト事業を、インダストリアルデジタルBUのソリューションや技術とつなげて、日立全体でどう強くしていくかを考え、取り組みを進める。このことが2025〜2027年度の次期中期経営計画で大事になってくるだろう。

⇒連載『日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌』の記事はこちら

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