機械設計の基礎はアナログに詰まっている 〜JIS製図法(その1)〜:若手エンジニアのための機械設計入門(1)(2/2 ページ)
3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるわけではない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第1回では、機械設計の目的や学ぶべき基礎知識の項目を整理し、JIS製図法の説明に入る。
あらためて、本連載の狙いについて
連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めたばかりの若手エンジニア(入門者)をターゲットに、“機械設計7つ道具+3D CAD”の内容から、必ず知っておいてもらいたい内容を厳選し、難し過ぎないように、できるだけ分かりやすく解説していきます。
まずは「JIS製図法」です。
JIS製図法(その1)
冒頭で述べたように、機械設計の現場では3D CAD運用が普及しています。そんな中、JIS製図法がなぜ必要なのでしょうか。JIS製図法と聞いて、きっと入門者の多くの方が2次元図面(以下、2D図面)をイメージされるでしょう。もし、そうであれば筆者は次のようにアドバイスします。
アドバイス(1):
JIS製図法は、2D図面だけのものではない
確かに、JIS製図に関してJIS(日本産業規格)を調べてみると、2D図面に関する規格がたくさん見つかります。これだけを見ると“JIS製図=2D元図面”のように見えてしまいますよね。しかし、JIS製図には設計をしていく上で重要な標準ルールについての記載があり、これは2次元も、3次元も欠かせない内容となっています。
アドバイス(2):
JIS製図法から設計のルールを理解しよう
「正面」はどこか?
設計をする上で、最初の基準として考えるのが「正面」がどこかです。以下に示したJISの規定では、“対象物の主要な特徴を表す図形”のことを「主投影図(正面図)」と表現しています。
JIS Z8315-1:1999 製図−投影法−第1部:通則 3.4 主投影図(principal view)
例えば、板部品に穴が1つだけ開いているような単純なものであれば、その平面(穴の開いた面)を主投影図としますが、複雑な形状の部品の場合は「どの向きが最も特徴を表しているか?」を考えなければなりません。そこで筆者からのアドバイスです。
アドバイス(3):
主投影図(正面図)には、設計意図が示されている必要がある
要するに、正面図を見れば、この部品がどのような役目を果たす(どのような機能を有する)ものなのかが一目で理解できるということです。この考え方は、2D図面であっても、3D図面であっても変わりません。
では、具体的に正面をどのように決めるのか? その一例を以下に示したいと思います。
図2をご覧ください。機械要素で最も使用されるネジです。図2のように、ネジの特徴とその形状を表しているのがこの方向(つまり、主投影図)です。
図3のように、ネジの頭だけを示してもその機能や形状は分かりません。
なお、3D CADを用いた3D図面の作成では、正面、平面、右側面の順にスケッチを描いていき、3Dモデル化していきます。そして、これを等角投影表示すれば、ネジの3Dモデルが図2のように正面を向いてくれるはずです。いかがでしょうか?
次回もJIS製図法について解説します。お楽しみに! (次回へ続く)
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