機械要素の基礎〜歯車の取り扱いに必要なJISの正しい理解〜:3D CADとJIS製図(12)(1/3 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。最終回となる第12回では、代表的な機械要素である「歯車」のうち、基本となる「平歯車」を取り上げる。
前回と前々回で、機械要素部品として頻繁に使用される「ねじ」について解説しました。
今回は、その他の代表的な機械要素である「歯車」のうち、基本となる「平歯車」を取り上げることにします。ちなみに、今回は本連載の最終回となります。
機械要素 | 該当するJIS |
---|---|
歯車 | B 0003:2012 歯車製図 |
ばね | B 0002:2007 ばね製図 |
転がり軸受 | B 0005-1:1999 製図−転がり軸受−第1部:基本簡略図示法 B 0005-2:1999 製図−転がり軸受−第2部:個別簡略図示法 |
キー | 製図 B 0001:2019 機械製図 規格 B 1301:1996 キーおよびキー溝 |
表1 主な機械要素と製図に該当するJIS |
歯車
歯車は「力を伝達する機構」として使用します。ベルトやチェーンと比べてトルク伝導が高く、時計に代表されるような正確な速度比での伝達、伝達軸間の距離が短い、といった特徴があります。製図について、JISには次のように規定されています。
1.適用範囲(JIS B 0003:2012より抜粋/編集)
この規格は、一般の機械に用いる次の8種類の歯車製造のための製図について規定する。なお、この規格は、歯車特有の事項について規定したもので、歯車の図面に含まれる一般事項については、JIS B 0001、JIS B 0021およびJIS B 0031による。
- a)平歯車
- b)はすば歯車
- c)やまば歯車
- d)ねじ歯車
- e)すぐばかさ歯車
- f)まがりばかさ歯車
- g)ハイポイドギヤ
- h)ウォームおよびウォームホイール
JISに記載されていた8種類の歯車について、その特徴を以下にまとめてみました(表2)。
歯車の種類 | 特徴 |
---|---|
平歯車 | ・汎用(はんよう)性が高く、最もシンプル ・製造が容易で高精度な歯車 |
はすば歯車 (ヘリカルギア) |
・歯筋がツルマキ状 ・歯の長さが平歯車より長く強度に優れる ・平歯車よりも、強く、静か |
やまば歯車 (ダブルヘリカルギア) |
・ねじれの異なる2枚のはすば歯車を重ねた形状 ・ねじれが対になりスラスト(軸方向)力がかからない |
ねじ歯車 | ・歯が軸方向に対してねじれた形状 |
すぐばかさ歯車 | ・2つの歯車の軸が交わるタイプの歯車 ・出力側の回転運動の方向を変更する場合に使用 ・交差軸歯車で最も一般的なもの |
まがりばかさ歯車 | ・はすばかさ歯車と似ているが、歯がツルマキ状 ・はすばかさ歯車よりも、さらに歯のかみ合わせが強固 ・すぐばかさ歯車よりも、強く、静か |
ハイポイドギヤ | ・食い違い軸の間に運動を伝達する円すい状の歯車 |
ウォームおよびウォームホイール | ・歯がねじのような形状 |
表2 歯車の種類の特徴 |
JISによる略画法
このような種類の中で、最も代表的な平歯車の製図を例に解説を進めます。筆者が普段使用している3D CAD「SOLIDWORKS」では、デザインライブラリの「Toolbox」から伝導機械要素として平歯車を選択できます([デザインライブラリ]−[JIS]−[伝導]−[歯車])
歯車は、一般的に「伝導車の周囲に歯形を作って、この歯車同士の歯形がかみ合い、伝導車が回転することで、歯形が次々とかみ合いながら力を伝える」という働きを持ちます。そこで、歯車の図面では、伝導車と歯形の設計仕様を表す必要があります。
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