機械要素の基礎〜歯車の取り扱いに必要なJISの正しい理解〜:3D CADとJIS製図(12)(2/3 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。最終回となる第12回では、代表的な機械要素である「歯車」のうち、基本となる「平歯車」を取り上げる。
歯車各部の名前
図2のように、歯車の各部には名前があります。これもまた「B 0102-1:2013 歯車用語−第1部:幾何形状に関する定義」に規定されています。各部の名称と意味を表3にまとめました。
歯車各部の名称 | 意味 |
---|---|
歯先円 歯先円直径 |
歯車の軸に垂直な平面による歯先円筒の断面 歯先円の直径 |
基準円 基準円直径 |
歯車の軸に垂直な平面による基準円筒の断面 基準円の直径 |
歯底線 歯底円直径 |
歯車の軸に垂直な平面による歯底円筒の断面 歯底円の直径 |
歯末のたけ | 歯先円と基準円との半径方向距離 |
歯元のたけ | 歯底円と基準円との半径方向距離 |
(正面)モジュール | 正面ピッチを円周率πで除した値。基準円直径を歯数で除した値に等しい |
正面ピッチ | 連続する対応歯形の間にある基準円の弧の長さ |
歯すじ | 歯面と任意の同軸回転面との交線 |
表3 B 0102-1:2013 歯車用語より |
この中で、モジュールは歯車の選定を行う上で重要な仕様になります。歯車は単体で使用せず、他の歯車との組み合わせで使用するものなので、モジュールの数値が正しくないと、歯車がかみ合わなかったり、スムーズに歯車が動かなかったりする場合があります。
組み合わされる歯車同士のモジュールの値は同じである必要があります。これは「JIS B 1701-2 円筒歯車−インボリュート歯車歯形 第2部:モジュール」の中で、モジュールの標準値として定められており、“できる限りI系列のモジュールを用いることが望ましい”とされています。
まずは、歯車を略画で描いていきますが、JISにこの略画法の規定があります。
4.2.図示方法(JIS B 0003:2012より抜粋/編集)
4.2.1.線の用い方
線の用い方は、次による。
- a)歯先円は、太い実線で表す(図3[1])
- b)基準円は、細い一点鎖線で表す(図3[2])
- c)歯底円は、細い実線で表す(図3[3])
ただし、軸に直角な方向から見た図(以下、主投影図という)を断面で図示するときは、歯底の線は太い実線で表す(図3[4])。なお、歯底円は記入を省略してもよく、特に、かさ歯車およびウォームホイールの軸方向から見た図では、原則として省略する。
- d)歯すじ方向は、通常3本の細い実線で表す
- e)主投影図を断面で図示するときは、外はすば歯車の歯すじ方向は、紙面から手前の歯の歯すじ方向3本の細い2点鎖線で表す。内はすば歯車の歯すじ方向は、3本の細い実線で表す
SOLIDWORKSで3D図面から2D図面を作成すると、図3左側枠内のような図面になりますが、一般的には図3右側のような略画法を使用して作図します。歯車の各部の用語を理解していれば、この2D図面を描くことはそれほど難しくありません。
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