意外とみんな意識しない、投影図の細かい規定:演習系山田式 機械製図のウソ・ホント(2)(1/2 ページ)
何気に描いたネジだって実は間違えているかも。問題1の解答は当たり前なことばかりに見えるが普段から意識しているだろうか?
前回出題した【問題1】の解答について、下記で解説していきます。
JISには、製図に使う用紙の大きさや輪郭線、表題欄から、投影法や投影図について、さまざまな規定があります。“自分の図面の悪いクセ”を知り、それを繰り返さないよう、JIS製図の作法を習得してください。
【問題1】の解答
ポイント1
JISによると、図面には必ず輪郭線と中心マークを付けなければいけません。輪郭線はA0とA1サイズで用紙の縁から4周をそれぞれ20mm空けて描き、A2〜A4サイズで4周をそれぞれ10mm空けて描きます。さらに、図面の各辺の中央に太い実線で中心マークを付けなければいけません。
ポイント2
その図面に採用した投影法を明示しなければいけません。日本では基本的に第三角法を用い、投影図も第三角法によって描かれていますが、表題欄には第一角法の記号が示されています。従って、第三角法の記号に修正しなければいけません。
ポイント3
図面に用いる尺度はJISによって推奨する尺度が決められています。倍尺では、2:1、5:1、……と続きますが、本図面例では3:1を使っています(3:1は推奨尺度ではない)。設計者が「どうしてもその方が最適」と判断した場合以外は、推奨尺度を使用しましょう。
ポイント4
軸形状のものは、一般的に旋盤を用いて加工します。本例では?で示している2面幅部分のみ旋盤では加工できませんが、それ以外は旋盤で加工されます。旋盤は世界共通であり、左側をチャック(固定)して右側を刃物で加工していきます。従って、加工者が軸を加工しやすいように、投影図は加工の多い方を右側にレイアウトすることがマナーです。
ポイント5
ねじ加工の端部は、不完全ねじ部ができます。ねじの製図上はこの不完全ねじ部の線は省略することができます。
ポイント6
形状の一部分が「平面であること」を表す場合は、“細い実線”の対角線を記入します。“太い実線”ではありません。今回の問題中にはないのですが、平面を表すことを示す線が隠れ線で示される場合、破線にせず細い実線を用います。
ポイント7
投影図を描くとき、手前の形状は描いてもその奥に見える形状を描くのを忘れてしまうことがよくあります。本例では、その奥に見える円形状を描かなければいけません。 *3次元CADに付属したドラフティング機能では、3次元モデルデータとリンクされていれば自動で描画されます。
ポイント8
図面に用いる文字において、仮名はひらがなまたはカタカナのいずれかを用い、一連の図面において混用してはいけません。ただし、ひらがなで統一する場合では、外来語など規定されている言葉はカタカナを用いなければいけません。
ポイント9
本図のようにキー溝を表したいだけのために、平面図全体を描くことは、投影図の表し方の一般原則で定める「不必要な細部の繰り返しを避ける」に反します。従ってキー溝の局部投影図のみを描くのがスマートであると判断します。局部投影図や部分投影図、補助投影図はその関連を示す中心線あるいは細線で結ばなければいけません。
ポイント10
本図では右側面図に表した形状は、すべて正面図で表されるため投影図として省略します。投影図の表し方の一般原則で定める「不必要な細部の繰り返しを避ける」ということを理解しておきましょう。
上記のように“右側面図は不要”ですが、この図の中にもよく間違える例があるので、下記で解説しておきます。
ポイント11
面取り部分を正面から見た図において面取りの線を描き忘れる事例が多く見受けられます。図形をよく理解して描き忘れないよう注意しましょう。
ポイント12
ねじの描き方がISO(国際標準化機構)に準じる形で変更されたポイントを紹介します。ねじの面取りを表す太い実線は省略します。これはねじを表すことを優先するためであると考えられます。また、ねじを正面から見た図では、細い実線で描いた円周を(やむを得ない場合を除いて)右上方4分の1円を切り欠きます。
最後にワンポイント・アドバイス
最新のJISについて、改めて調べてみましょう。
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