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ZOZOはなぜ計測技術の開発を弛まず続けているのか組み込み開発 インタビュー(2/3 ページ)

身体の寸法を測る「ZOZOSUIT」や足のサイズを測る「ZOZOMAT」といった計測のデバイスやサービスの展開を弛まず続けているZOZO。ファッションECサイトで成功を収める同社はなぜ計測技術の開発に注力しているのか。ZOZO 計測プラットフォーム開発本部 本部長の山田貴康氏に話を聞いた。

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スーツやマットを使わずに計測できる技術の開発にも取り組む

MONOist ZOZOMATをはじめZOZOの計測サービスではマーカー方式を採用することが多いですね。

山田氏 例えばZOZOMATはmm単位で足を採寸できる精度がありますが、レーザー方式の3Dスキャナーとの比較検討なども行っています。他にも世の中にはさまざまな計測ツールがあるのでそれらも調査しています。

 マーカー方式を採用している最大の理由は、いかにたくさんのお客さまの自宅で測ってもらえるかを重視しているからです。たくさんのお客さまに測っていただくためには、自宅で測ってもらえるとともに、たくさんのお客さまに届けられる形状である必要があり、紙製のマット形状にしています。そして、マーカー方式はさまざまな家庭環境に対応できるというメリットがあります。各家庭で照明も違えば床の色なども違ったりします。そういった環境の違いに対して、最もロバストかつ高い精度で計測できる方式は何なのかというところを突き詰めた結果がマーカー方式なのです。もちろん、マーカー方式にはマーカーを撮影するカメラが必要なわけですが、スマートフォンの普及が加速度的に進んだこともあってこのことは課題になりませんでした。

 ただし、マーカー方式からさらに先に進むための取り組みも進めています。2024年10月に、事業者向けのサービスにはなりますが、ZOZOSUITなしで採寸の計測ができる「ZOZOMETRY(ゾゾメトリー)」を発表しました。

「ZOZOMETRY」のイメージ
「ZOZOMETRY」のイメージ[クリックで拡大] 出所:ZOZO

 ZOZOMATでは、紙製のマットを使って計測しているわけですが、われわれとしては将来的にそれさえも必要としない世界に進みたいと考えています。ZOZOMATの紙製のマットも、注文いただいてからお客さまに届けるまでに時間は当然かかります。ECは今欲しいものをすぐに買えるという利便性があるわけですが、そのときに体や足のサイズを採寸したいと思ってもZOZOSUITやZOZOMATがなければ測れないわけです。計測という技術の必要性が発生したタイミングでいかにお客さまに寄り添えるかは非常に重要だと考えています。だからこそ、今後もより手軽に、より簡単に計測できる技術を届けるための取り組みは続けていきます。もちろん手軽さと精度はトレードオフがあるので、アプリケーションが必要とする精度と計測のしやすさをどう両立させていくかはわれわれが一番関心があるところです。

MONOist ZOZOMATなどでの計測サービスは、計測技術のことをよく分かっていない一般ユーザーでも利用できるようなUI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザー体験)が必要になります。このあたりの検討はどのように進めているのでしょうか。

山田氏 計測サービスの導入に当たっては、社内検証から始まり、前提知識のない社外の方を招いての検証などかなりの時間をかけて行っています。その中では、どうしてもつまずきやすい箇所があるというのが分かってきますので、アプリ側での改善、マットなどのデザインの改善など、ハードウェアとソフトウェアの改善をしっかりやりました。さまざまな改善を重ねていることもあり、例えばZOZOMATは累計で約270万人(2024年6月時点)の方に使っていただいています。

子ども向けの「ZOZOMAT for Kids」を開発した理由

MONOist 2024年8月に子どもの足を3D計測できる「ZOZOMAT for Kids(ゾゾマット フォー キッズ)」を発表しました。ZOZOMATは大人向けのサービスですが、ZOZOMATを使って子どもの足のサイズを計測したいというニーズはどれくらいあったのでしょうか。

「ZOZOMAT for Kids」の利用イメージ
「ZOZOMAT for Kids」の利用イメージ[クリックで拡大] 出所:ZOZO

山田氏 ZOZOMATのサービスを提供した段階から、お客さまがお子さんの足を測りたいというニーズが強いことは認識していました。ZOZOMATで大人の足が測れるから、子どもの足も測るというのは結構やられていて、実際に子どもの足と思われる計測データも多数上がっていました。当然ながら、ZOZOMATと連携してお勧めする靴はないわけですが……。

 私自身も現在8歳の子どもがいるのですが、ZOZOMATを発表したタイミングはまさに3〜4歳のころです。ちょうど靴を買い始める時期なんですが、足がどんどん大きくなるので半年に1回ぐらい買い換えないといけない。最適なタイミングで最適な靴を購入するというのはとても難しかったこともあり、親心としてZOZOMATで子どもの足を測りたいという要望はよく分かりました。この悩みを解決したいからこそ、今回発表したZOZOMAT for Kidsを開発するモチベーションにもなっています。

 ZOZOMATの発表からの5年間で、足の3D計測に関する知見やノウハウをより多く蓄積しています。ZOZOMATと連携する製品も当初はスニーカー中心で100型程度でしたが、その後革靴やサンダル、ブーツなどを追加しており、現在は7200型以上に対応するようになりました。ZOZOMATの発表時点で子ども向けの靴のラインアップはあまり充実している状態ではありませんでしたが、現在は品ぞろえも豊富になってきました。足の3D計測という観点でも、子ども向けの最適化が可能な状況になっており、ちょうどいいタイミングでのZOZOMAT for Kidsの発表になったと考えています。

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