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ZOZOはなぜ計測技術の開発を弛まず続けているのか組み込み開発 インタビュー(1/3 ページ)

身体の寸法を測る「ZOZOSUIT」や足のサイズを測る「ZOZOMAT」といった計測のデバイスやサービスの展開を弛まず続けているZOZO。ファッションECサイトで成功を収める同社はなぜ計測技術の開発に注力しているのか。ZOZO 計測プラットフォーム開発本部 本部長の山田貴康氏に話を聞いた。

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 デジタル技術の進化で大きな恩恵を受けたサービスの代表といえるのがEC(Eコマース)だ。リアルでの商取引が大きく制限されたコロナ禍を経て、今や日々の生活でECは不可欠な状況にある。

 国内ファッションECサイト「ZOZOTOWN」の展開で大きな存在感を放っているZOZOが長年注力しているのが、身体の寸法を測る「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」や、足のサイズを測る「ZOZOMAT(ゾゾマット)」といった計測のデバイスやサービスの展開である。2017年に発表したPB(プライベートブランド)事業の縮小と同時に、ZOZOSUITなどの計測技術の展開もいったん終息するかに見えたものの、2019年6月にZOZOMATを発表し、それ以降も弛まずさまざまな計測サービスの開発を続けている。

 ZOZOが計測技術の開発に注力し続けているのはなぜなのか。ZOZOSUIT立ち上げのタイミングから、これら計測のデバイスやサービスの開発に携わってきたZOZO 計測プラットフォーム開発本部 本部長の山田貴康氏に話を聞いた。

「ZOZOSUIT」の立ち上げタイミングで入社

MONOist ZOZOに入社する以前はどのような業務に携わっていましたか。

山田氏 最初のキャリアとして大手ショッピングモールの運営会社に勤めていました。2000年ごろから9年ほどECサイト構築を担当していたのですが、まだECというサービスの黎明期だったこともあり、そもそもお客さまにどのように購入してもらうのか、サーバ内で画像をどのように共有するのかといった技術面の話も含めて手探りで取り組んでいたことをよく覚えています。あれから20年以上が経過してECが普及し、今では若い方からお年寄りの方まで非常に幅広く利用していただける、日常に欠かせないツールになっていることは感慨深いですね。

ZOZO 計測プラットフォーム開発本部 本部長の山田貴康氏
ZOZO 計測プラットフォーム開発本部 本部長の山田貴康氏。手に持っているのは、2024年8月に発表した子どもの足を3D計測できる「ZOZOMAT for Kids」用のマット[クリックで拡大]

 ZOZO(当時はスタートトゥデイ)に入社したのは2017年、まさにZOZOSUITのサービスを立ち上げるタイミングでした。私自身は、2000年代にECを広げていくという経験があったわけですが、2017年ごろには既にかなり普及しつつあったECのサービスに課題がないわけではないと思っていました。例えば、お客さまがどんな方なのか、どんなものが好きなのか、ファッションECで言えばどんな体のサイズなのか、そういったことを直接聞くことは難しいわけです。しかし、ZOZOSUITに代表される「計測」という手段を通じて、お客さまの姿や思考をよりダイレクトに理解できるということに大きな可能性を感じましたし、私が取り組むべき非常に大きなテーマになると考えました。当時のトップの前澤さん(前澤友作氏)や、伊藤さん(伊藤正裕氏)といっしょにZOZOSUITの立ち上げに関われたこともいい経験になりました。

 ECサイトはリアルにお客さまと対面することは基本的にできません。現実としてお客さまと対面できない中で、計測という技術を使えばお客さまの姿形をきっちりと把握でき、より最適な商品を購入してもらえる。現在、ECというサービスの利便性が向上して、ECでモノを買うというハードルは多くの方に乗り越えていただけていると思います。しかしながら対面できないという課題を克服して、さらにより多くの方に利用していただくにはどうすればいいのか。計測という技術テーマは、その課題解決に役立つと考えています。

MONOist 当初ZOZOSUITの立ち上げに関わっていたとのことですが、ZOZOSUITの展開の起点となったPB事業の縮小などもあり、計測技術そのものに注力しなくなるイメージが持たれていた時期がありました。しかし、2019年6月に最適な靴のサイズ選定に役立つ足の3D計測を行えるZOZOMATを発表しました。

山田氏 当時事業としてはいろいろありましたが、計測技術の開発を止めようという話は一切なかったですね。先ほどお話した通り、お客さまを理解する上で計測技術は非常に有効なツールであるということは社内でも認識されていて、それは今でも変わりません。そういった認識があるからこそ、事業的に厳しい時期もありましたが計測技術の開発をしっかり進めていく方針は変わりませんでした。

 また、ZOZOMATにつながる足のサイズを計測する技術の開発はZOZOSUITとほぼ同時進行で進んでいました。カメラでマーカーを撮影して計測するという技術は基本としてありますが、体が計測できるなら足も計測できるだろうというのは自然な展開でした。ただし、足のサイズを計測するデバイスについては、ZOZOSUITのように足に装着する靴下を使うことなども検討しましたが、性別や体型別に8種類のサイズを用意していたZOZOSUIT以上に複数サイズを展開しなければならないことが課題でした。

 そこで最適なソリューションとして導き出したのが紙製のマットを使うZOZOMATです。紙製なので、着用するZOZOSUITと比べて製造や配布にかかるコストを非常に安価に抑えられます。われわれは計測技術でお客さまのことを理解したいわけですが、そのためにはより多くのお客さまに計測技術を利用してもらえるようにしなければなりません。スーツ形状から紙製のマット形状に変えたことには大きな意義があったと考えています。

「ZOZOMAT」の利用イメージ
「ZOZOMAT」の利用イメージ[クリックで拡大] 出所:ZOZO

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