加速するNECの生成AI事業 新部門を立ち上げ「BluStellar」の強化も:製造マネジメントニュース
NECは2024年11月27日、事業戦略や技術を発表する年次イベント「NEC Innovation Day 2024」を開催した。本稿では同社のAI関連の事業戦略などを抜粋して紹介する。
NECは2024年11月27日、事業戦略や技術を発表する年次イベント「NEC Innovation Day 2024」を開催した。本稿では同社のAI(人工知能)関連の事業戦略などを抜粋して紹介する。
AIの事業開発担う新部門を設置
NECは現在、DX関連の価値提案などを行う事業「BluStellar」の展開に注力している。その中で、BluStellarにおける提案力を強化するため、AI関連の新部門を立ち上げた。それが2024年8月に新設した、AIの研究開発から事業開発、デリバリー、マネージドサービスの展開を一気通貫で担うAIテクノロジーサービス事業部門だ。
NEC Corporate SVP 兼 AIテクノロジーサービス事業部門長 兼 AI Research Officerの山田昭雄氏は「生成AIなどの提供に先立ち、私たち自身が1つのサンプルとして社内でさまざまな技術を試した上で提案できるようにする。研究開発と事業開発を並行して行うことで、価値創出までのスピードを上げていく」と説明した。
AIテクノロジーサービス事業部門では、BluStellarを展開する上でコアとなる2つの提供価値を定めている。1つは、クライアントの高度な専門業務プロセスを自動化していくこと。もう1つは、セキュアかつ確実な業務遂行ができるAI利用環境を提供することだ。これらを前提に、生成AIを活用したSI事業やサービス事業、ライセンス事業を展開するとしている。
具体的なサービス事例としては、電子カルテシステム「MegaOak/iS」やPLMソリューション「Obbligato」などがある。MegaOak/iSでは電子カルテの文書作成効率化を、Obbligatoでは設計業務の効率化や高精度化などのために生成AIを活用する。これらに加えてサービス事業の一例として、さくらインターネットの生成AI向けプラットフォーム向けサービスにおいて、利用可能なLLMの第一号としてNECのLLM「cotomi」が採用されたことも紹介した。
社内人材のスキルアップを目的とした、LLMを用いた人材育成プログラムの開発も進める。営業やコンサルタント、SEなどさまざまな職種を対象にしたプログラムで、生成AIに関連したスキルの習得を目指す。2024年10月時点で450人が受講を完了しており、今後、1000人規模まで展開を進めるという。
2025年1月からAIエージェント提供開始
生成AIを中核にしたアプリケーション、サービス、ソリューションの展開も加速する。日本語処理性能などを以前より高めた「cotomi v2」を中核に、業種別にワークフローの高度な自動化などを実現するソリューションを2024年12月から提供開始する。代表的なオープンLLMと比較しても、日本語1文字当たりの生成速度は高速で、かつグローバルトップクラスの高精度性も実現しているという。
cotomi活用時の前処理と後処理の過程、そしてcotomiを運用するプラットフォームに工夫を加えて、ハルシネーションを低減する工夫を盛り込んだ。今後、生成AIの業務での使われ方を自己学習して、プロンプト作成の負担を軽減する機能追加を目指す。電力効率を大幅に改善したインフラストラクチャの導入も進める。
2025年1月からはAIエージェントサービス「NEC AI Agent」も提供開始する。ユーザーの指示内容を分解して必要なタスクを自動的に分析、実行し、ワークフローを生成する。例えば、「クライアントに提出するRFP(提案依頼書)を作成して」と依頼すると、細かな指示なしでも「社内文書からの要点抽出」「関連情報の検索」「提案内容を作成」などと自律的に課題をブレークダウンして複数のタスクを作成する。
AIエージェントの性能では、cotomi v2で実現したような文字の生成速度が、重要なカギを握る可能性がある。「AIエージェントではバックグラウンドで生成AI同士のやりとりが複数回実行される。高速生成可能な生成AIモデルを持っていることは、他社と比較した際の競争上の優位性になる」(NECの説明員)
生成AIのマルチモーダル性も拡張し、RAG(検索拡張生成)による社内文書などに記載された図版の読み取りを、文脈に基づいてできるようにする。図表に含まれている「暗黙の理解」を読み取れるようにする。
山田氏は「迅速な価値サービスを提供する体制づくりや、継続的に新しいサービスを投入するための社内外における最前端のプラクティスの実証、そして、業務プロセス改革を加速していくための新機能の継続的な投入を通じて、社会のあらゆるシステムにAIを導入し、より住みやすい社会の実現を目指していく」と語った。
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