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モノづくりの知識を身に付けた生成AI、パナソニックHDが技術承継などで活用へ人工知能ニュース

パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)とストックマークは、パナソニックグループ専用の大規模言語モデルの開発で協業する。パナソニックグループの社内データを追加事前学習させた「Panasonic-LLM-100b」を開発し、設計や製造などのモノづくり業務において、自然言語でのやりとりで業務支援を行えるような仕組み構築に取り組む。

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 パナソニック ホールディングスとストックマークは2024年7月2日、パナソニックグループ専用の大規模言語モデル(LLM)の開発で協業すると発表した。パナソニックグループの社内データを追加事前学習させた「Panasonic-LLM-100b」を開発し、設計や製造などのモノづくり業務において、自然言語でのやりとりで業務支援を行えるような仕組み構築に取り組む。

生成AIの活用を進めるパナソニックグループ

 パナソニックグループでは、2023年2月にグループ傘下のパナソニック コネクトでマイクロソフトが提供する「Azure OpenAI Service」を基に開発した「ConnectAI」を国内全社員を対象に提供を開始。その後、このConnectAIをベースに全社版の環境を構築し、同年4月から「PX-AI」として、パナソニックグループの国内全社員に向けて展開し、活用を進めている。

 パナソニック ホールディングス テクノロジー本部 デジタル・AI技術センター 所長の九津見洋氏は「パナソニックグループでは一貫してAIは道具だという位置付けで、幅広い事業領域のプロフェッショナルがAI技術を使いこなすことが重要だというスタンスだ。その中でAIについて、わずかなデータで簡単に実装できる『Scalable AI』と、人間中心で信頼して使える『Responsible AI』という2つの方向性でのAIの進化を重視している」と述べている。

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パナソニックグループのAIの考え方[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

国内最大級となる1000億パラメータ規模の専用LLMを開発

 ただ、こうした期待に対し、現在の汎用型モデルの生成AIではいくつかの課題を抱えている。1つは、ビジネス領域における知識不足により、そのまま業務で使用するとハルシネーション(AIがもっともらしいうそをつく現象)が高頻度で起こることだ。もう1つは、データ利用量に応じて課金されることで使うほどコストが増えることから、あらゆる業務には組み込みにくいということだ。

 これらの課題を解決し、業務での本格活用を視野に、パナソニック ホールディングスとストックマークは協業し、パナソニックグループ専用のLLM開発を行う。ストックマークが開発したLLM「Stockmark-LLM-100b」は、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催し国内の生成AI開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC」への採択を受け、2024年5月に商用利用可能な形式で公開されたものだ。日本語をベースにフルスクラッチで開発されたLLMで、独自のビジネスデータを学習させていることが特徴だ。そのため、日本語のビジネス領域に特化し、ハルシネーションの大幅抑止を実現している。さらに、これにパナソニックグループ内の社内データを追加事前学習させた「Panasonic-LLM-100b」を構築する。

 ストックマーク 代表取締役CEOの林達氏は生成AIの活用について「生成AIは約7割が導入済みとする調査結果がある一方で、それほどビジネス用途では利用が進んでいない。利活用が進まない要因の大きなものがハルシネーションだ。これを抑えた信頼性や厳密性の高い生成AIが求められているが、そのためには業務に関係したデータを学習させることが必要になる」と述べている。

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パナソニックグループのAIの考え方[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 一般的に国内各社が取り組む自社LLMは70〜130億パラメータの小型モデルを採用することが多いが、今回の取り組みではパナソニックグループの膨大な社内データを学習させた国内最大級となる1000億パラメータ規模のLLM開発を行い、パナソニックHDで開発中のマルチモーダル基盤モデルへの統合を目指す。

設計や製造で若手技術者へのノウハウ継承で活用

 まずは、製品や技術などに関する汎用的な情報に関わるデータなどを読み込ませて学習を進めていく。当面はモデルの有効性などを確認し、検証を進めながら2024年秋ごろに本格的に業務への導入を目指す。

 パナソニックHDの九津見氏は「汎用的な情報の次に、技術ノウハウなどコンテキストにつながるようなデータに学習範囲を広げていく。利用用途としては、内部の業務マニュアルなどに代替する支援などを想定している。自然言語での問いかけに対し、Q&Aで最適解を提案するような仕組みで、設計での若手技術者の支援やノウハウの継承などでの活用を期待している。将来的には、こうした仕組みを顧客との応答などで使うユースケースを想定し、検証などを進めていくつもりだ」と述べている。

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