国内製造業での生成AI活用度合いは海外より高い傾向に CEO意識調査レポート:人工知能ニュース(1/2 ページ)
PwC Japanは2024年3月19日、生成AIに関するCEOのグローバルな意識調査結果を発表した。国内企業が海外企業と比較して生成AI導入に積極的な姿勢を見せている他、製造業やヘルスケア業界でとくに生成AIの活用度が高いといった実態が浮かび上がった。
PwC Japanは2024年3月19日、国内外企業のCEOを対象とした生成AI(人工知能)に関する意識調査結果を発表した。国内企業が海外企業と比較して生成AI導入に積極的な姿勢を見せている他、製造業やヘルスケア業界でとくに生成AIの活用度が高いといった様子が読み取れる。
国内企業は早々に「幻想から脱却」?
今回の調査は2023年10月2日〜11月10日の約1カ月間、日本を含めた105の国/地域にいる約4702人のCEOを対象に実施した。
過去12カ月間で、生成AIを自社の業務で受け入れているかを尋ねたところ、受け入れているとした企業の割合が日本では50%だったのに対して、中国や香港を除くアジア地域では約39%、米国では38%、欧州では28%、中国は27%となった。自社業務で生成AIを活用している企業の割合が、世界の中でも日本がトップだと分かった。
PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナーの藤川琢哉氏は「日本の経営者はDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れに対して非常に強い危機感をもっている。このため生成AIに対してかなり積極的に投資をしている様子がうかがえる」と説明する。日本のCEOは、「現在のビジネスのやり方を変えなかった場合に10年後に自社が経済的に存続できない」という質問にも64%が賛同しており、他の国/地域よりも高い結果となっている。
藤川氏は「国内企業にはデジタル化されていないアナログなドキュメントデータが散逸した状態で保管されている例が多い」と語り、非構造化データにも適用しやすい生成AIの特徴が生かしやすい環境がある点も、今回の調査結果に影響を与えている可能性を指摘した。
一方で、生成AI活用によって今後12カ月間の自社の収益性や売り上げ、従業員の労働生産性にどのような影響があるかを尋ねた質問では、増加すると回答した国内企業の割合は、いずれの項目でも海外企業に比べて低かった。これについて藤川氏は、「国内企業はいち早く生成AI活用を進めた結果、生成AIに対する幻想から脱却して現実解が見えてきているのではないか」と指摘した。
さらに、国内企業による生成AIへの期待感が低調な要因としてもう1つ考えられるのが、過去のAI投資において適切なROI(投資利益率)を得られていないことだ。PwC Japanが実施した過去の調査では、「AI投資に対してROIを得ている」と回答した国内企業の割合が低い傾向にあった。同調査ではAIの性能監視とビジネス効果に関しても質問したが、「稼働後のAIモデルの性能は安定しており、想定していたビジネス効果が実現されている」と回答した国内企業は17%で、米国企業の61%と大きな差がついていた。一方で、「稼働後のAIモデルの精度が著しく低下し、想定していたビジネス効果が実現されていないケースがあった」と回答した国内企業は46%で、米国企業の23%を上回っている。
国内企業が過去にAI投資に対する適切なROIを得られていないにもかかわらず、生成AIの業務導入に積極的な理由は何か。藤川氏に尋ねると、生成AIの導入目的がまだ曖昧なまま導入している企業が多い可能性があると前置きした上で、「これ自体は全く悪いことではない。まずは使ってみるということはテクノロジー浸透において、大事なことだ。そこから出てきた課題などをしっかりと拾い上げて、効果を最大化する取り組みにつなげることが求められている」とコメントした。
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