高速AI予測システムを活用したミニバン車両の空力性能予測の検討を発表:CAEニュース
トヨタシステムズは、トヨタ車体と共同で高速AI予測システム「3D-OWL」を活用した空力性能予測の検討を発表した。ミニバン車両を対象とした空力性能サロゲートモデル構築を検討している。
トヨタシステムズは2024年11月20日、高速AI(人工知能)予測システム「3D-OWL(3D Operation with Learning)」を活用した「ミニバン車両を対象とした空力性能サロゲートモデル構築の検討」を発表した。トヨタ車体との共同研究の成果で、「自動車技術会2024 秋季大会」において講演した。
空力性能評価は、デザイン案が固まってきた後に実施するが、フィードバックを受けてデザイン変更を繰り返すため時間がかかる。そこで、3DモデルとCAE解析データを活用した3D-OWLシステムを車両開発初期に用いることで、意匠開発と空力性能(Cd)予測の同期化を目指す。
特にミニバン車両は、車室空間の確保が優先されがちで、空力性能と背反することが多い。他車型以上に意匠との両立が求められる傾向があるため、学習データとして、ミニバン車両の外形意匠を特徴づける16の設計因子を選定し、モーフィング技術で200ケースの意匠を作成、計算解析した。
3D形状を2D画像で認識する技術、3D-OWLのガウス過程回帰を用いて、形状再現度を確保しながら計算負荷を低減している。ML(機械学習)の入力は、3次元メッシュで表現された形状を2次元画像にリダクションし、特徴量としたものを用いた。この2次元画像は、「Depth Map」と呼び、Cd、揚力係数Cl(Cl)値の2つの空力性能値、18個の圧力、流速分布を予測対象としている。
Depth Mapには、画像ファイルのRGBα成分を使用し、3次元情報を保存。2バイト分の解像度、αの成分はシルエット情報を持つ。RGBいずれかが0ではない場合に255、その他の場合は0とした。
Clはややバラツキが見られたが、初期検討時に空力抵抗係数(Cd)は十分な精度が得られたと判断した。また、流れ場も良好な予測結果が得られている。
同社は、3D-OWLについて、車両の空力性能以外を対象に、形状に起因する性能予測に適用範囲を広げることを検討している。
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