CO2の地中貯留と鉱物固定を促進する、キレート剤を活用したCO2削減技術を開発:研究開発の最前線
東北大学は、植物由来かつ生分解性キレート剤を利用した、CO2削減技術を開発したと発表した。CO2の地中貯留、鉱物固定を促進する手法で、室内実験で実現可能性を実証した。
東北大学は2024年11月18日、植物由来かつ生分解性キレート剤を利用した、CO2削減技術を開発したと発表した。CO2の地中貯留、鉱物固定を促進する手法で、室内実験で実現可能性を実証した。
今回の研究では、鉱物の溶解を促し、金属イオンと結びつくL−グルタミン酸二酢酸(GLDA)などの植物由来、生分解性キレート剤に着目。レモンのpH程度の酸性のキレート剤水溶液を井戸から岩石層へ圧入し、この岩石層の鉱物を溶解して孔隙を作った。その孔隙の量と連結性を増加させてCO2貯留空間を増やし、浸透性(CO2の圧入性)を高めた。
CO2だけを貯留する場合には、井戸からCO2を岩石層へ圧入する。そのCO2は地下水に溶け込み、岩石から溶出してきたカルシウムなどの金属イオンと反応して炭酸塩鉱物として固定化される。
水にCO2を溶かして貯留する場合は、キレート剤を添加して強アルカリ性にした海水にCO2を吹き込んで溶解させる。CO2と反応して炭酸塩鉱物を成すカルシウムなどの海中の金属イオンは、キレート剤に補足されており、岩石層内でキレート剤が生分解されるまでCO2との反応が抑えられる。
また、CO2の吸収により、キレート剤を含む海水のpHは元の海水の約8pH程度で、かつ炭酸塩鉱物の生成に適したpHになる。この海水を井戸から岩石層へ圧入すると、CO2が溶け込んだキレート剤含有海水は、鉱物を溶かして孔隙を形成しながら貯留される。
岩石層に貯留されたキレート剤含有海水中のキレート剤は、いずれ生分解されて結合していた金属イオンを放出する。これにより、炭酸塩鉱物としてCO2が固定される。
安全、安心かつ効率的なCO2地中貯留、鉱物固定法を開発したことで、世界の低炭素化への貢献が期待される。今後は、CO2地中貯留、鉱物固定の時空間スケールでの現象を予測できるシミュレーターの開発を進める。同時に、その開発に必要なキレート剤とCO2を含む水中での鉱物の反応に関する基礎データも拡充していく。
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