パナソニック流デザイン経営の3年間の歩みと現在地:デザインの力(2/2 ページ)
パナソニックグループが推進する「デザイン経営」とは? パナソニックホールディングス 執行役員 デザイン担当で、「デザイン経営実践プロジェクト」のリーダーを務める臼井重雄氏が、3年間の活動の歩みと成果として見えてきた変化の兆しについて解説した。
各所で変化の兆しが 10以上の自走プロジェクトも進行中
臼井氏がデザイン経営実践プロジェクトの成果として挙げるのが、パナソニック くらしアプライアンス社 キッチン空間事業部の変革だ。これまで“冷蔵庫を作ること”が目的化していたため、前年製品との差分設計/差分開発/差分商品企画が課題となっていたキッチン空間事業部だが、未来構想を起点とした意識改革により、実現したい未来が明確化され、言語化できるようになり、実際に未来構想に基づいた新コンセプトの商品などが生まれ始めている。「事業の目的も、冷蔵庫を作る事業から、食の創造性探求やフードロス削減を目指す事業へと変化の兆しが見え始めている」(臼井氏)。
また、技術領域における成果として、パナソニック ホールディングス 技術部門の事例も紹介した。これまで技術部門が掲げてきたビジョンは技術ドリブンの視点で描かれていたが、未来構想を起点とした思考の転換によって、未来起点×人間中心の考えに基づく技術未来ビジョンの策定につなげることができ、研究開発テーマや体制の見直しといった変化の兆しをもたらしたという。
前述の通り、当初事業部を対象にしていたデザイン経営実践プロジェクトの活動は、約3年で事業会社単位、機能軸へと対象を拡大し、着実にグループ内での広がりを見せている。デザイン経営実践プロジェクトが支援した部門/人数は、2022年6月時点で2部門/30人だったが、2024年11月時点では10部門/172人と約5倍にもなっている。同時に、自走力強化の成果として10以上もの自走プロジェクトが進行しているとのことだ。
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