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パナソニックが表参道を舞台に“未来を共創する”2つのデザイン展を同時開催デザインの力(1/5 ページ)

パナソニック デザイン本部は日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」に参加し、東京・表参道にあるPanasonic Beauty OMOTESANDOで企画展「Aspect」を開催。併せて、FUTURE LIFE FACTORYのこれまでの歩みを紹介する「FLF EXHIBITION #00 ARCHIVE - 2024」を開催し、さまざまなプロトタイプなどを披露した。

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 パナソニック デザイン本部は日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」に参加し、東京・表参道にあるPanasonic Beauty OMOTESANDO B1F Studioにおいて、企画展「Aspect」(会期:2024年10月22〜27日)を開催。併せて、デザインR&Dに特化して活動する同社 デザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」(以下、FLF)の新拠点であるFUTURE LIFE FACTORY OMOTESANDOで、2017年の設立から8年目を迎えるFLFのこれまでの歩みを紹介する「FLF EXHIBITION #00 ARCHIVE - 2024」を開催し、さまざまなプロトタイプなどを披露した。

「これからのくらしの豊かさ」を考える――Aspect

 Panasonic Beauty OMOTESANDO B1F Studioで開催されたAspectは、同社 デザイン本部が構想する未来を提示し、さまざまな側面から「これからのくらしの豊かさ」について考える機会を来場者と共有することを狙った企画展だ。パナソニックは2030年に目指す姿として、「くらしの豊かさの維持向上」と「地球・社会課題の解決」を両立させるベストパートナーになることを掲げており、同社 デザイン本部はその実現に向けた活動を行っている。

VISION UX

 Aspectの展示は大きく2つで構成される。1つは「自分、大切な人、地球を思いやる行動が広がっていく世界」を目指し、10年後のありたい姿を描いた短編動画展示「VISION UX」だ。VISION UXは、膨大で複雑化する社会課題に直面する今、“10年後どのような未来を生きたいか?”という問いに基づき、事業を超えた新たな価値の創出に向けて2021年から活動を開始したプロジェクト。これまで家庭、職場、地域コミュニティーなどにおけるさまざまな理想の暮らしを探求し、中長期の事業開発やブランド発信を行ってきた。

「VISION UX」のスクリーン展示
「VISION UX」のスクリーン展示[クリックで拡大]

 今回の展示は、VISION UXのこれまでの活動を基に描いた未来の理想像(12シーン)を映像で示したものとなる。その内容は、テクノロジーの進化によって人々の暮らしが便利になるといった単純な視点ではなく、人、植物、動物、ロボット、都市といったあらゆる存在が垣根を越えて共存共栄する社会、自然災害や気候変動による暮らしの変化、都市との向き合い方、人の死や死後の在り方などが描かれており、共に生きる存在同士の橋渡しとなり、関係性をより豊かなものにするためにテクノロジーがさりげなく寄り添っている“少し先に本当に実現しそうな未来”を提示するものとなっている。

「Becoming with(まちの全体像)」。VISION UXが提示する未来の暮らしや社会の在り方を描いたコンセプトムービー 出所:パナソニック

 「今回VISION UXで示した10年後のありたい姿は、パナソニックだけで実現できるものではない。これをたたき台に、皆さんと一緒になって議論し、アイデアを出し合っていく方がより良い未来に近づけるのではないかと考え、今回企画展として初めて一般公開するに至った。気候変動に伴う自然災害や猛暑など、近年、日常がこれまでの考え方では成り立たなくなってきていることもあり、災害復興や避難所での暮らし、死後の世界なども描いている」と、パナソニック デザイン本部 トランスフォーメーションデザインセンター プロジェクトデザイン部 リードデザイナーの井野智晃氏は企画展開催の狙いを語る。

 中でも、自然災害などで大きなダメージを受けた都市(街)の“治療”や“看取り”にロボットを活用し、生物や自然にも配慮した復興の在り方を描いた「都市を治療し、都市を看取る。」、介助がないと動けないロボットを人間が助けたり、人間と同じようにロボットがソファに座って休んだりしている様子を描き、テクノロジーと人間の関係性の考え方を問う「ケアしケアされるためのテクノロジー」、バーチャル技術を用いて亡くなった人と同じ空間で時を過ごすことができ、生きているうちに死後の自分のデータをどう扱ってほしいのかを決められる社会を提示した「優しい幽霊」などが印象的だった。

→使い続ける / MUGE

 そして、2つ目の展示が「→使い続ける / MUGE」だ。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けて、顧客とともに「モノを使い続ける」ことを考えるためのコンセプトモデルを提示するもので、2024年9月28日〜10月6日に京都の両足院で開催した「→使い続ける展 2024 / MUGE」でお披露目したものの中から、特に好評だった3つの作品を展示していた。

 「市場にある家電製品のほとんどがキレイな樹脂の筐体で囲われて、中身が見えない状態が当たり前になっているが、一度それを取り払って、普段見ることのない中身をオープンにすることで、使い手が仕組みを理解し、手を加え、愛着をもって長く使い続ける製品の在り方、新しいカタチとはどんなものかを提示した。両足院のイベントでも多くの方からアイデアや意見をいただくことができた」(井野氏)

冷蔵庫の冷媒管を用いて制作された盆栽アート「露 -RO-」
冷蔵庫の冷媒管を用いて制作された盆栽アート「露 -RO-」[クリックで拡大]

 「露 -RO-」は、家電の再生過程における素材と、植物や木材などの自然の材料が時とともに変化し、次の命へとつながっている様子を表現したインスタレーション作品だ。“露”という言葉は、禅宗で「むき出しになった本質」を意味する。素材には、同社のリサイクル工場であるパナソニック エコテクノロジーセンター(PETEC)で回収された冷蔵庫の冷媒管を用いており、盆栽アーティストとのコラボレーションによって創作されたという。

 「響 -KYO-」は、建築の古材や欠損のある木材から再生した木をパネル状にし、接着剤やくぎなどを使わずに自由に組み立てたり、分解したりできる空間オーディオのコンセプトだ。“響”という言葉は、禅宗で「隠された深い意味」を表す。一から自分自身で組み上げることで、一般的なオーディオであればブラックボックス化されている構造を理解でき、組み方をアレンジしてのアップデートや修理がより身近なものに感じられるようになる。井野氏は「木のパネルもわれわれから提供するだけでなく、例えば、いらなくなった本棚の一部を加工してパネルにしたり、子供が使わなくなったおもちゃを積み重ねてパネル代わりにしたりするなど、生活や思い出と一緒に音を楽しむといった体験もできるのではないか」と説明する。

木のパネルを自分で組み立てて使用する空間オーディオのコンセプト「響 -KYO-」
木のパネルを自分で組み立てて使用する空間オーディオのコンセプト「響 -KYO-」[クリックで拡大]
響(1)響(2)響(3) バラバラの状態から自分の好きなように組み立てられるのが特長[クリックで拡大]
「泉 -SEN-」のファン部分
「泉 -SEN-」のファン部分[クリックで拡大]

 「泉 -SEN-」は、部屋の空気をファブリック(生地や織物など)に通して浄化する、空気清浄機のようなコンセプトモデルだ。構造は非常にシンプルで、天井からつるされたファブリックに、小型のファンが取り付けられているのみだ。例えば、緑茶カテキン繊維や光触媒繊維など、さまざまなファブリックを選んで自由にカスタマイズできる。もちろん、ファブリックを洗濯機で洗えば繰り返し使うことも可能だ。“泉”という言葉は、禅宗で「心身を清めるもの」を意味するという。

部屋の空気をファブリックに通して浄化する「泉 -SEN-」
部屋の空気をファブリックに通して浄化する「泉 -SEN-」[クリックで拡大]
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