検索
連載

GAIA-Xが目指す自律分散型データ共有、“灯台”プロジェクトは協調から競争領域へ加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(4)(5/5 ページ)

欧州を中心にデータ共有圏の動向や日本へのインパクトについて解説する本連載。第4回は、第3回で取り上げたIDSAと並んで業界共通での仕組み作りを担うGAIA-Xを紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

(11)【モビリティ/交通】Gaia-X 4 Future Mobility

 GAIA-Xをベースとした未来のモビリティアプリケーションの実装。道路状況監視、駐車スペース管理、自動運転、車両ソフトウェア開発など。メーカー、サプライヤー、サービスプロバイダー、ユーザーとのデータベースのネットワーク。モビリティ、特に情報通信技術に関するあらゆるアプリケーション、研究などの幅広い分野から約80のプレイヤーが参加している。

図12
図12 Gaia-X 4 Future Mobilityの主なユースケース[クリックで拡大] 出所:Gaia-X 4 Future MobilityのWebサイト

(12)【モビリティ/交通】Mobility Data Space

 自動車メーカーからライドシェアサービス、公共交通機関運営企業、ナビゲーション/ソフトウェア企業、研究機関、自転車シェアリング企業など多くの企業が参加しており、モビリティ分野の未来に焦点を当てて活動している。

  • 【リビングデジタルツイン】自動車からの動的なデータを基に現在の交通状況を正確に把握。交通計画や、警察・災害時救助、物流最適化などに活用
  • 【道路安全性向上】車両データ/過去の自己記録/環境情報を利用して、危険を予測し安全な道路を目指す
  • 【災害時危険箇所把握】車両センサー情報から大雨/凍結などの危険情報を把握
  • 【ロケーションインテリジェンス】AI(人工知能)とデータを用いて都市や企業にとってEV充電ステーションに有利な場所を特定
  • 【走行距離課金保険】コネクテッドカーにおける走行距離に応じた保険料支払い
  • 【駐車モニタリング】車両データから空き駐車スペースを検知しマッチング

(13)【モビリティ/交通】EONA-X

 旅行データを連携することで観光体験を最適化するとともに、荷物/貨物などの物流/モビリティの最適化も図る。モビリティ、輸送、観光のユースケースを促進するための信頼できる環境を提供することを目的としている。主な焦点は、EUモビリティ戦略で定義されたゼロエミッション目標の達成に貢献するための複合移動の最適化。

(14)【農業】agdatahub

 農業/農産食品のデータ仲介プラットフォーム。農業データの共有/連携により生産性/品質/収益性の向上や、トレーサビリティーの担保などの実現を目指す。作物モデル、土壌データ、病害モデル、農薬データ、経済性データ、天候データ、地理データなどのデータ共有も行う。

(15)【ライフサイエンス】HEALTH-X dataLOFT

 個人の医療データの連携/活用を通じた新サービスの創出を目指す。以下のようなユースケースがある。

  • ウェアラブルデバイス、健康アプリなどのデバイスから得られるデータを基に予防と健康維持、医療診断/治療に活用するサービス
  • がん患者の診断データ/臨床データ、患者モニタリングデータなどを横断連携することによりパーソナライズ化された治療の提案
  • 個人の遺伝的情報に基づいた薬の適合性判断、腰痛の予防や治療、心血管疾患の早期検出など
  • 臨床データ/診断データなどを匿名化し2次利用市場を創出

(16)【ライフサイエンス】TEAM-X

 医療データの共有を通じた予防医療/予測/パーソナライゼーション/ケアの最適化の実現を目指す。Siemens Healthineers(シーメンスヘルスケア)、フラウンフォーファー研究所などが参画。以下のようなユースケースがある。

  • 乳がんを患う女性がさまざまな分野で改善されたケアを受ける「医療/女性の健康」
  • 入院患者と外来患者の老年医療および緩和ケアの提供を目的とした「デジタルケアプラットフォーム」

(17)【人材育成】PROMETEUS-X

 スキル教育/人材育成に関するデータ連携を目指す。以下のようなユースケースがある。

  • パーソナライズ化された学習
  • パーソナライズ化されたスキルマッチング
  • 組織レベルのスキルギャップ分析
    など

(18)【クラウド】Structura-X

 欧州のクラウドプロバイダーなど10カ国に本拠を置く28の企業/団体が、GAIA-X標準に準拠しデータ連携の仕組みを構築する。



 次回は、自動車業界のデータ共有圏となるCatena-X、Cofinity-Xを取り上げる。(次回に続く)

筆者紹介

小宮昌人(こみや まさひと)
株式会社d-strategy,inc 代表取締役CEO
東京国際大学 データサイエンス研究所 特任准教授

 日立製作所、デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所、産業革新投資機構 JIC-ベンチャーグロースインベストメンツを経て現職。2024年4月より東京国際大学データサイエンス研究所の特任准教授としてサプライチェーン×データサイエンスの教育・研究に従事。加えて、株式会社d-strategy,inc代表取締役CEOとして下記の企業支援を実施。

(1)企業のDX・ソリューション戦略・新規事業支援
(2)スタートアップの経営・事業戦略・事業開発支援
(3)大企業・CVCのオープンイノベーション・スタートアップ連携支援
(4)コンサルティングファーム・ソリューション会社向け後方支援

「生成DX」(SBクリエイティブ)

 専門は生成AIを用いた経営変革(Generative DX戦略)、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革(プラットフォーム/リカーリング/ソリューションビジネスなど)、デザイン思考を用いた事業創出(社会課題起点)、インダストリー4.0・製造業IoT/DX、産業DX(建設・物流・農業など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ、自動運転など)、スマートシティ・スーパーシティ、サステナビリティ(インダストリー5.0)、データ共有ネットワーク(IDSA、GAIA-X、Catena-Xなど)、ロボティクス・ロボットSIer、デジタルツイン・産業メタバース、エコシステムマネジメント、イノベーション創出・スタートアップ連携、ルール形成・標準化、デジタル地方事業創生など。

 近著に『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社/共著)、『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる〜』(日経BP)があり、2024年11月には『生成<ジェネレーティブ>DX 生成AIが生んだ新たなビジネスモデル』(SBクリエイティブ)を出版。経済産業省『サプライチェーン強靭化・高度化を通じた、我が国とASEAN一体となった成長の実現研究会』委員(2022)、経済産業省『デジタル時代のグローバルサプライチェーン高度化研究会/グローバルサプライチェーンデータ共有・連携WG』委員(2022)、Webメディア ビジネス+ITでの連載『デジタル産業構造論』(月1回)、日経産業新聞連載『戦略フォーサイト ものづくりDX』(2022年2月-3月)など。

  • 問い合わせ([*]を@に変換):masahito.komiya[*]keio.jp

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る