新工場だからこそ抜本的に新しい取り組みを
EV(電気自動車)などの取り組みの進捗についても発表した。カーボンニュートラル実現に向けて中長期的にはEVが軸になると見込むが、先行きの不透明さを踏まえて柔軟性と拡張性を持って「モノづくり革新」と「価値づくり」に取り組むのが基本方針だ。電動化関連で1.5兆円を投資する計画は変えていない。また米国でのEV生産は引き続き検討中だという。
足元の商品ラインアップは、トヨタ自動車との共同開発によるEV4車種と、HEV(ハイブリッド車)の展開拡大が軸となる。EVに移行するスピードが不透明なため、エンジン搭載車の需要も一定程度継続すると見込む。ただ、モノづくり革新ではEVを念頭に生産や開発などのプロセスを大きく変え、その成果をエンジン搭載車にも展開する形で進めていく。
日本の生産拠点でのEV対応は段階的に進める。新工場となる大泉工場(群馬県大泉町)ではまずEV専用ラインを立ち上げ、将来的にEV以外の電動車の混流生産が可能な生産ラインにしていく。ゼロから建設する自由度を生かして、敷地や建屋の空間を最大限に活用することを目指す。なお、過去に発表した矢島工場での混流生産の計画は維持している。
新工場は、モジュール化やサブライン化によってメインラインの柔軟性を高める。また、生産に関わるさまざまなデータを可視化し、変更はリアルタイムに反映させる。データに基づく行動で業務のスピードと質を向上させる。また、混流生産では、自動化された物流システムなどによって以前から取り組んできた変種変量短生産の効率を一層高める。さらに、車両の構造や仕様をシンプルにすることで、生産プロセスを大きく変える。モジュール化は取引先の部品と内製部品の両方で進め、部品点数を減らすことで生産工程も短縮する。
大泉工場の近隣では、パナソニックエナジーとともにバッテリー工場も建設する。群馬県太田市を中心に近距離圏内に複数の生産拠点を構えるメリットを生かし、取引先や部品の物流まで含めたサプライチェーンの効率化を図る。
新工場の建設がモノづくりのアプローチやプロセスを大きく変える機会だとしている。企画から設計、開発、製造、ライン保守までのエンジニアリングチェーンや、仕入れ先も含めたサプライチェーンが一体となったアジャイルなモノづくりの検討を進めている。取引先も含めて集まり、大部屋活動で議論する。こうした“高効率なパッケージ”の下で、開発手番や部品点数、生産工程の半減を目指す。
価値づくりでは協業を活用する。小型軽量なeAxleはアイシンと共同開発する。バッテリーの供給に関してはパナソニックエナジーと、ADAS(先進運転支援システム)向けのSoC(System on Chip)ではAMDと協力していく。
統合ECUは、これまでのADAS開発での知見を生かした内製開発により、スバルらしい知能化を目指す。スバル 専務執行役員 経営企画本部長の江森朋晃氏は「ADASはハードウェアもソフトウェアも自前だった。半導体の回路設計からやっていたので、人材も知見もある。それを生かしてAMDと協力するからこそ、半導体の消費電力やコストの低減に向けてAMDと対話するところまでいけた。長年ADASを内製してきたからこその強み」と述べた。
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