データでオフィスの進化目指すイトーキ 攻めつつ守るDXの進め方:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
オフィス家具/設備の大手メーカーであるイトーキ。近年、同社がその枠を脱し、デジタルデータを活用した新たな成長戦略の確立に向けて取り組みを加速させていることをご存じだろうか。DXを急速に進めるイトーキの狙いや現在地について聞いた。
トップが掲げた世界観が社内に浸透
MONOist 中期経営計画の目標に対して、現状の進捗はどうでしょうか。
八木氏 サービスの構想とリリースはおおむね計画通り進んでおり好調だ。今後の課題ということで言えば、これまで家具製造を主力の事業として展開してきたため、AI(人工知能)やセンシングの技術の蓄積がない。スタートアップやアカデミアなど外部と協力しつつ、これらの技術を当社が持つオフィス構築や働き方に関する知見と組み合わせて、どうサービスに組み込んでいくかを考えている。
ただ、技術を理解できる人間が社内に全くおらず、技術を外部から“調達”する状況は好ましくない。IT人材とIT分野での営業を担える人材を中心に採用活動を強化している。同時に、データサイエンティストの採用も積極的に行っているが、人気の職種のため確保が難しい。ベトナムのハノイ工科大学の採用イベントに出席し、来年から入社してくれる人材を確保するなど対策を進めている。
竹内氏 ITシステムについて言えば、私は2023年に入社したが、入社後はERPの移行プロジェクトはすでにある程度進んでいた。現場の反発も少なく、プロジェクトに大量の人間が参加していたが向いている方向が同じで、スムーズに進んでいたことに大変驚いた。企業のトップである湊が「データドリブンな経営に変えていくのがイトーキにとって大事だ」とメッセージを発信し、それが社内で浸透している証だ。
IT部門としては、e-learningや外部セミナーなどを通じて、仕事外でも積極的に新しい技術を習得しなければならない。そうしなければ、業務部門から要請されたシステム導入を行うだけの部門になってしまう。業務部門のニーズに対して逆に提案できるIT部門にしていきたい。
MONOist トップによるメッセージの浸透は、DX推進において重要だと言われます。
八木氏 イトーキの現在と将来の事業を、製品販売事業の「Office1.0」、コンサルティングなど付加価値提案事業の「Office2.0」、そしてOfiice3.0という3段階で整理したのも湊だ。彼が来るまでは、オフィス内の人やモノがつながるという世界観を別の言葉で表現していたが、それがクリアになった。
新規事業といっても今のイトーキからかけ離れたことではない、現在の延長線上を目指そう、というメッセージが営業や製造など社内全体に伝わっている。これまで椅子の説明をしていた営業担当者が、今後はデータビジネスを本命サービスとして紹介できるようにしようと意識して、一生懸命勉強してくれている。新規事業が社内でひとごととして扱われていない。さらに、Office3.0の推進によって、Office1.0やOffice2.0の既存事業も引き上げられていく好循環が生まれている。
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