スマート製造の土台整備を行ったRRIの10年、データスペースなど共通課題で国際連携:製造×IoTキーマンインタビュー(2/2 ページ)
ロボット革命を推進するために設立されたロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会は活動10年目を迎えた。活動を主導してきた主要メンバーに10年間の成果と今後の方向性を聞いた。
ドイツとの共同文書も数多く公開
実際に共通課題としてドイツとともにさまざまな共同プロジェクトを推進している。国際標準化や産業セキュリティ、産業データ連携についてはアクショングループでの活動を推進し、共同文書の発表なども進めている。
長くWG1で主査を務めた水上氏は「話し合いの中では、枠組みをしっかりと決めるドイツと、最終的な現場の調整でなんとかする日本の産業文化的な違いなどもあり、難しい場面も何度かあった。しかし、それぞれの考え方を説明することで、お互いに理解が深まり、新たな視点が生まれることもあった。内容以前のそれぞれの考え方や仕事の進め方への理解が重要だと感じた」と取り組みについて語っている。
データスペースに向けた連携への取り組み
これらの土台作りが進んだ中で、RRIはIoTによる製造ビジネス変革において、次にどのような取り組みを進めていくつもりなのだろうか。藤野氏は「RRIは基本的には実行団体ではないので、あくまでも枠組み作りで貢献していくことは変わらない。これまで10年間の取り組みで国際連携や情報発信への土台作りは進んだので、これらを生かしてデジタル時代にふさわしい製造業の在り方に向けて支援を進めていく」と語る。
その意味で、役割として期待されているのが、産業データスペースに向けての国際連携の動きや、そのための課題解決への取り組みだ。欧州では、自動車産業向けでサプライチェーン情報を連携するデータスペースとして「Catena-X」が進められているが、これを1つのきっかけとし、製造産業のあらゆる情報をデータスペース経由でやりとりできるようにする「Manufacturing-X」などの構想も進んでいる。
RRIではこれらの動きを把握し、課題などを明確化するために、WG1傘下に、2023年4月に「産業データ連携アクショングループ(AG)」を発足。3つのタスクフォース(TF)で活動を行っている。TF1は、Catena-Xなど欧州の先行事例のベンチマークを行い、欧州型産業データ連携の仕組みを明確化し、TF2では、産業データ連携による社会や環境価値や企業利益、懸念事項を明確化するためにユースケースを検討する。TF3では連携される産業データ間の意味的な相互運用性についての検討を行っている。2024年8月にはこれらの3つのTFの成果をまとめた活動報告書をリリースしている。
中島氏は「産業データを有効に活用するためにデータ連携を進めようとする動きは強まっている。しかし、国際的なデータ連携には、企業や業界、国家などのさまざまな条件が関係するために、なかなか枠組み作りがうまく進まない。特に日本企業はこうした動きが苦手だ。日本でもウラノス・エコシステムなどデータスペースの動きが生まれているが、欧州を中心に海外の取り組みを国内に紹介するとともに、国内での動きを発信していく。そして、連携の窓口としての役割を果たしていく」と今後の取り組みについて述べている。
RRIでは、これらのデータスペースへの取り組みも含めて活動を紹介するシンポジウム「ロボット革命・産業IoT国際シンポジウム2024〜Call for Action: 社会イノベーションに向けた製造変革〜」を2024年10月31日に開催予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 広義のロボット活用拡大へ、加速するRRI
ロボデックス開催に合わせて実施されたロボデックスカンファレンス「世界に革命を起こす!日本のロボット新戦略とは」では、開催記念講演としてロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)事務局長の久保智彰氏が登壇。「ロボット革命とIoTによる製造ビジネス変革に向けて」をテーマに同協議会のIoTおよびロボット利活用推進を目指した取り組みを紹介した。 - 「製造業の未来」に向け、RRIと米国CESMIIが連携
ロボット革命・産業IoT イニシアティブ協議会(RRI)は2021年10月13日、米国のスマート製造に関する国立研究機関であるthe Clean Energy Smart Manufacturing Innovation Institute(CESMII)と「製造業の未来」をテーマに連携協力することで合意したことを発表した。 - デジタル時代の製造業、勝ち筋は80%をつかみ取る「人中心」の考え
「ロボット新戦略」に基づき「ロボット革命」を推進するために民間主導で設立された組織的プラットフォーム「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ(RRI)」は2020年10月27日、国際シンポジウム「製造ビジネス変革 日本の道」を経済産業省の共催で開催した。本稿では、その中で「日本の製造業の生きる道」をテーマとしたパネルディスカッションの内容を紹介する。 - 製造業の2035年のあるべき姿をRRIが策定へ、業界横断の工業会連携も
ロボット革命イニシアティブ協議会の中で、IoTによる製造業の変化をテーマとする「IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)」は2017年度の方針を発表。新たに2035年の製造業の将来像を2017年度内に策定する他、製造業に関連する工業会との連携を強化する方針を示した。 - ロボット普及は黎明期、利活用の壁を破る手段と国際大会の開催
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は2018年6月14日、都内で3つのワーキンググループ(WG)の活動報告会を開催した。後編では「ロボット利活用推進WG(WG2)」と「ロボットイノベーションWG(WG3)」の活動を紹介する。 - オールジャパン体制へ、“つながる”製造業の変革に向けRRIとIVIが連携
「つながる工場」実現に取り組むインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(以下、IVI)は2021年6月10日、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(以下、RRI)とIoT(モノのインターネット)による製造ビジネス変革を目的とする活動の推進で連携する合意文書(MoU)に調印したと発表した。