スマート製造の土台整備を行ったRRIの10年、データスペースなど共通課題で国際連携:製造×IoTキーマンインタビュー(1/2 ページ)
ロボット革命を推進するために設立されたロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会は活動10年目を迎えた。活動を主導してきた主要メンバーに10年間の成果と今後の方向性を聞いた。
2015年5月に設立されたロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)は、活動10年目を迎えている。「ロボット新戦略」(日本経済再生本部)に基づき「IoT(モノのインターネット)による製造ビジネス変革WG(WG1)」「ロボット利活用推進WG(WG2)」「ロボットイノベーションWG(WG3)」の3つのWG活動を進めてきたRRIだが、10年間でどのような成果を残してきたのだろうか。また、これからどのような取り組みを進めていくのだろうか。
今回は主に「IoTによる製造ビジネス変革WG」において、活動を主導してきたRRI インダストリアルIoT推進統括の中島一雄氏、RRI 製造IoT情報マーケティング(野村総合研究所 未来創発センター シニアチーフストラテジスト)の藤野直明氏、長らくIoTによる製造ビジネス変革WGの主査を務め、現在は産業IoT アドバイザーとなった水上潔氏に話を聞いた。
スマート製造における国際連携の土台を築いてきたRRI
RRIは「ロボット新戦略」の具体的な推進母体として2015年5月に産官学が協力して取り組みを推進する民間主体のプラットフォームとして設立された。ロボット革命として、ロボットの利活用の拡大を推進するとともに、革新的なロボット技術の開発推進などを進める他、広義の意味でのロボット革命として、IoTによる製造ビジネス変革を主要テーマに組み込んで活動を続けてきた。
特に当時はドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムが国内でも大きな注目を集め、日本の製造業としての強みが脅かされる危機感が強まっていた。そこで、RRI WG1では、日本政府と協力し、ドイツ政府や世界の製造業DXの推進団体と次々に協力についてのMOU(基本合意書)を結び、情報連携や共同プロジェクトの推進などを進めた。
藤野氏は「当時はインダストリー4.0がどういうものか、ドイツでどういう人たちがどういう体制で何を進めているのかも分からなかった。その中で日本政府の協力もあり、ドイツでインダストリー4.0を推進する団体であるプラットフォームインダストリー4.0と相対する団体として位置付けてもらい、直接情報交換を行えるようになったのは大きかった」と当時を振り返る。
2017年3月にはドイツのIT分野の国際見本市「CeBIT」(33年の歴史があったが2018年開催を最後に終了した)において「ハノーバー宣言」が行われ、日独でIoT領域を核としつつ、連携を進めていくことなどを発表。その後、毎年4月に行われるハノーバーメッセと、10月に開催されるシンポジウムにおいて、日独経済フォーラムを開催し、産業DXについての定期的な議論を進める体制ができた。
一方、米国についても2017年10月にインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)と産業IoT分野での連携についての協力を発表した他、2021年10月には米国のスマート製造に関する国立研究機関である「the Clean Energy Smart Manufacturing Innovation Institute(CESMII)」と「製造業の未来」をテーマに連携協力することを発表している。その他、国内外のスマート製造や製造業DXに関する団体との連携を進めており、それぞれの地域における状況や、共通課題の洗い出しなどを行ってきた。
中島氏は「最初は何から手を付けていいのか分からない状態だったが、今では世界中の団体との連携が常にとれるようになったことで、世界の情勢や動き、共通課題などについて正確に把握できるようになった。その中で協力できる点や発信できる点なども見極めができるようになり、円滑に国際連携の動きが取れるようになった。海外で何が起こっているかを国内に発信するとともに、国内での取り組みや関心事を海外に発信する基盤ができた10年だった」とこの10年を振り返る。
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