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データ/AI活用を阻む影――製造業の生産性を奪う7体の“デジタル怪獣”とは:製造業の生産性を飛躍させるデータ/AI活用の全貌(前編)(3/3 ページ)
製造業の生産性や稼働率を高めるために大きな期待がかけられているのがデータとAIの活用だが、多くの企業でうまくいっていない現状がある。本稿は、前編でデータ/AI活用を阻む“デジタル怪獣”を紹介し、後編ではその退治法となるアプローチや成功事例などを解説する。
デジタル怪獣が生まれる根本原因
これらのデジタル怪獣は、以下の重要な要素が欠如していることから生まれています。
- ビジョンと戦略の欠如:データ/AI活用によって何を達成したいのか、そのためにどのような戦略を取るのかが明確でないと取り組みの方向性が定まりません。例えば、稼働率を具体的に何%向上させるのか、そのためにどのプロセスを改善するのかといった明確な目標設定が必要です
- プロジェクトの優先順位の不明確さ:限られたリソースをどのプロジェクトに投入すべきかの判断ができないと、効果的な成果が得られません。全ての課題に一度に取り組もうとするとリソースが分散し、どれも中途半端に終わってしまいます
- 組織文化や人材育成の遅れ:データ/AI活用に対する理解や協力が得られず、現場と経営層の間にギャップが生じます。人材育成が進まないと内製化も困難になり、外部依存から脱却できません。データリテラシーの向上やデータ活用を推進する組織文化の醸成が求められます
前編のまとめ
製造業の現場でデータ/AI活用を成功させ、作業者や機械の稼働率向上を実現するためには、これらのデジタル怪獣を克服する必要があります。そのためには、明確なビジョンと戦略の策定、組織全体での取り組み、適切なガバナンス、人材育成と組織文化の醸成が不可欠です。
次回の後編では、これらの怪獣を倒し、稼働率向上を実現するための全体的なアプローチと具体的な成功事例について詳しく探っていきます。データとAIを効果的に活用し、製造業が直面する多くの課題を乗り越えるための具体的な方法を考えていきましょう。(次回に続く)
筆者プロフィール
笹口 和秀(ささぐち かずひで) DataRobot Japan, AI サクセスディレクター
主に建設業や製造、ユーティリティーの顧客へのAI戦略策定や組織/人材育成などに従事。併せて、脱炭素/GXへのAI活用/促進を担当。前職はコンサルティングファームのマネージャーとして事業戦略策定やDX新規事業立案などに従事。
・DataRobot https://www.datarobot.com/jp/
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