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生成AIでスケッチから3Dモデルを――Autodeskが推進する研究開発プロジェクトに迫るメカ設計インタビュー(2/2 ページ)

ツールベンダーという立ち位置から戦略を転換し、プラットフォームカンパニーへと舵を切るAutodesk。プラットフォームの強化とともに、注力しているのが生成AIを活用した研究開発だ。新たなデータモデルAPIの可能性と併せて、その狙いやビジョンを責任者に聞いた。

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BOMのデータ変更がリアルタイムでCADへ、ERPへ

――次に、製造業向けの新たなデータモデルAPI(以下、新データモデルAPI)について伺います。これはどのようなものですか。

ライヒネーダー氏 新データモデルAPIは、製造業のデジタル化を加速させる新しい基盤技術として設計されている。最大の特長は、プラットフォームを構成する3層構造(前述したプラットフォームサービス、データモデル、エンドユーザーのこと)を活用した多層的な接続性にある。企業は目的や既存システムの状況に応じて、最適な接続方法を選択できる。

 例えば、ERPやCADとの連携が必要な場合は、アプリケーションの画面上で直接データをやりとりできるユーザーインタフェースレベルでの統合を選択する。BOM(部品表)やシミュレーションデータの双方向で利用したい場合は、システムの内部でデータを直接やりとりするデータモデルレベルでの統合が適している。また、単純なデータの参照や更新だけを行う場合は、基本APIレベルでの接続で十分だ。

――新データモデルAPIを利用すれば、CADやBOM、ERPの間でデータのやりとりが可能になるということですか。

ライヒネーダー氏 その通りだ。BOMを例に説明しよう。従来、製造業ではCAD、PDM、PLM、ERPといった各システムで、個別にBOMを管理していた。例えば、ペン1本でも、それを構成する全ての部品一つ一つに、部品番号、名称、材料、重量といった基本的な情報に加え、調達情報、在庫情報、製造工程情報など、さまざまな属性データを管理する必要がある。さらに、スプリングを含むユニットが3つの部品で1つの機能を構成するといった入れ子構造も存在し、データ管理は非常に複雑だ。

 しかし、こうした現状の課題も新データモデルAPIを利用すれば解決する。なぜなら、CAD、PDM、PLM、ERPといった全システムでBOMの情報を共有できるからだ。新データモデルAPIでシステム間の同期やインポート/エクスポートが実行できるので、手動での再入力作業を排除し、一貫性のある情報管理ができる。例えば、特定部品で設計変更が行われた場合でも、関連する全てのシステムで即座にデータが更新され、常に最新の正確な情報で業務が続けられる。

新データモデルAPIを利用すれば、CADやBOM、ERPの間でデータのやりとりが可能
新データモデルAPIを利用すれば、CADやBOM、ERPの間でデータのやりとりが可能。1箇所の変更が他のツールにも即座に反映される 出所:Autodesk

――オートデスクは新データモデルAPIをどのように位置付けていますか。

ライヒネーダー氏 われわれは新データモデルAPIを通じ、製造業のデジタル化を支えるエコシステムの中核となることを目指している。顧客企業やパートナー企業が独自のソリューションを開発できる環境を提供することで、業界特有の課題解決を促進する。例えば、自動車部品メーカーが自社特有の品質管理プロセスに合わせたアプリケーションを開発したり、産業機械メーカーが予防保守のための専用システムを構築したりすることが可能だ。

 また、SAPなどのERPとCADデータの双方向のやりとりが可能になることで、コスト最適化と生産効率の向上を同時に実現できる。先述した特定部品の設計変更では、新しい部品の調達コストや在庫状況を即座に確認でき、代替部品の提案や生産計画の調整も自動的に行える。また、過去の調達実績や在庫データを設計段階で参照できるため、コストを考慮した設計も可能になる。

――新データモデルAPIが普及すれば、製造業は将来的にどのように変貌していくとお考えですか。今後の展望についてお聞かせください。

ライヒネーダー氏 APIの公開により、既に複数のユーザー企業から新たなソリューションが誕生している。例えば、AI技術を活用した設計最適化ツールやサプライチェーン管理の専用アプリケーションなどだ。こうした、サードパーティーによる独自のサービス開発が活発になっていることは、オートデスクのエコシステムが製造業のデジタル化を支えるプラットフォームとして進化している証だと自負している。

 世界的な労働力不足や高齢化が進む中、製造業には一層の効率化と自動化が求められている。特に、データ入力や照合といった付加価値の低い反復作業を自動化し、設計者やエンジニアがより創造的な業務に注力できる環境を整備することが重要だ。われわれはこのAPIを通じて、より持続可能で効率的な生産プロセスの実現に貢献していきたいと考えている。

(取材協力:オートデスク)

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