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さらに進化する「Fusion」 外部連携やAI機能の強化で生産性と創造性が向上Autodesk University 2024レポート(1/2 ページ)

米Autodesk(オートデスク)の年次カンファレンス「Autodesk University 2024」では、全体を通して生成AI(人工知能)とデータの重要性が語られた。2日目の製造業を対象にした基調講演の注目ポイントを紹介する。

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 2024年10月15〜17日(現地時間)の3日間、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された米Autodesk(オートデスク)の年次カンファレンス「Autodesk University 2024」(以下、AU 2024)では、全体を通して生成AI(人工知能)とデータの重要性が語られた。

 2日目の製造業を対象にした基調講演では、同社 デザイン&設計ソリューション担当 エグゼクティブバイスプレジデントのJeff Kinder(ジェフ・キンダー)氏らが登壇。3D CADソフトウェア「Autodesk Inventor」(以下、Inventor)や「Autodesk Fusion」(以下、Fusion)の機能強化、データモデリングのプロセスを効率化する新機能などを紹介した。

「Autodesk University 2024」では、昨年(2023年)発表された「Autodesk AI」の具体的な製品実装について語られた
「Autodesk University 2024」では、昨年(2023年)発表された「Autodesk AI」の具体的な製品実装について語られた[クリックで拡大]

データを“媒介”に、設計から製造までを一気通貫で連携

 2日目の基調講演の冒頭、キンダー氏は製造業を取り巻く技術変化について、次のように言及した。

Autodesk デザイン&設計ソリューション担当 エグゼクティブバイスプレジデントのジェフ・キンダー氏
Autodesk デザイン&設計ソリューション担当 エグゼクティブバイスプレジデントのジェフ・キンダー氏

 「技術は栄枯盛衰が激しく、常に新しい技術への対応が迫られている。製造業でも競争が激しさを増す中、設計から製造、運用まで、製品ライフサイクル全体を統合プラットフォームで管理できる環境が求められる。同時に、生産性と収益性の両方を向上させる技術を適所に導入し、競争に勝たなければならない。(中略)われわれの『Autodesk AI』は設計/製造の複雑さを軽減し、設計者や技術者が高付加価値な仕事に集中できるようにするものだ」(キンダー氏)

 製造向けソリューションでは、140以上の新機能/機能強化を図られている。その中からキンダー氏が真っ先に紹介したのが、Inventorのミラーアセンブリ機能の大幅改良だ。左右対称部品の自動設計に加えて、関連付け機能が強化された。片方を変更すると、自動的に反対側にも変更が反映される。キンダー氏は「これにより設計プロセスの効率が大幅に向上する」と説明する。

ミラーアセンブリ機能の大幅改良(1)ミラーアセンブリ機能の大幅改良(2) 少々分かりにくいが、左右対称部品で片方を変更する(左)と、自動的にもう片方にも変更が反映される(右)[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 また、製品データ管理(PDM)ソフトウェア「Autodesk Vault」(以下、Vault)では、新たなAPI(Application Programming Interface)が追加され、「Autodesk Platform Services」(Autodesk プラットフォーム)上でのデータ共有が可能となった。具体的には、Fusionや「Autodesk AutoCAD」で作成したデータを、異なるソフトウェア/システム間でも共有できる。例えば、Vaultに保存されたInventorファイルを、Fusionへ直接同期するといったことも可能だ。これにより、Fusionの加工、シミュレーション、ジェネレーティブデザインといった機能を、Inventorデータにも適用できるようになる。

 さらに、新たなAPIでは、サードパーティーアプリケーションとの連携も強化された。外部システムのデータをFusionモデルに直接取り込むことが可能となり、既存の業務プロセスとの統合が改善された。例えば、基幹系システムのSAPとFusionの双方向接続が実現し、CADエンジニアと製造担当がFusion内でERP情報を直接確認できるようになるという。

 同社は、Fusionを製造業向けの業界クラウドと位置付け、設計からシミュレーション、製造、運用までを1つの環境に統合している。キンダー氏は「実際、過去1年でアセンブリパフォーマンスを300%向上させ、大規模プロジェクトの協働が容易になった。さらに、新たなAPIによるデータ連携で、データのサイロ化が解消され、外部とのコラボレーションもしやすくなった。データを“媒介”にして、設計コンセプトから工場での製造までを一気通貫で連携することで、製品を迅速に市場投入できる」と訴えた。

新たなAPIによるデータ連携の強化により外部とのコラボレーションも容易になった製造業向けクラウド「Autodesk Fusion」
新たなAPIによるデータ連携の強化により外部とのコラボレーションも容易になった製造業向けクラウド「Autodesk Fusion」[クリックで拡大] 出所:Autodesk

データ収集では不十分、必要なのは「データ駆動の環境」

 今回のカンファレンスでは生成AIの話題と同じくらい、データの重要性について強調するシーンが目立った。AIは「設計プロセスを高速化するエンジン」といわれるが、これを最大限に生かすためには、“質の高いデータ”が不可欠だ。

Autodesk データ&プロセス管理グループ統括 バイスプレジデントのデレク・クーパー氏
Autodesk データ&プロセス管理グループ統括 バイスプレジデントのデレク・クーパー氏

 同社 データ&プロセス管理グループ統括 バイスプレジデントのDerrek Cooper(デレク・クーパー)氏は、「生成AIを活用する上で製造業のデータは重要な資産となるが、多くの企業ではその潜在的な価値が十分に生かされていない。ある調査によると、企業が生成するデータの68%が未使用だという。これは、自動化や洞察を得る機会を逃していることを意味する。われわれが2024年に実施したデザインと製造(Design&Make)に関する調査では、78%の企業が『AIは業界を変革する』と考えていることが明らかになったが、それを実現するにはデータ駆動の環境を構築する必要がある。単なるデータ収集では不十分だ」と指摘する。

 さらに、クーパー氏は「こうした課題に対して、Fusionは製造業向けの業界クラウドとして機能し、全てのデータを一元化して、AIによる新たな可能性を創出する」と訴える。この方針に基づき、今回のカンファレンスではFusionの機能強化として「AutoConstrain in Fusion Automated Sketching(自動スケッチ内の自動拘束機能)」「Drawing Automation(図面の自動化機能)」「Autodesk Assistant」が発表された。これらの新機能の基盤となっているのがAutodesk AIだ。

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