さらに進化する「Fusion」 外部連携やAI機能の強化で生産性と創造性が向上:Autodesk University 2024レポート(2/2 ページ)
米Autodesk(オートデスク)の年次カンファレンス「Autodesk University 2024」では、全体を通して生成AI(人工知能)とデータの重要性が語られた。2日目の製造業を対象にした基調講演の注目ポイントを紹介する。
「Fusion」に搭載される3つの新しいAI機能
同社 デザイン&設計部門 バイスプレジデントを務めるStephen Hooper(ステファン・フーパー)氏が、Fusionに搭載される3つの新たなAI機能について説明した。
AutoConstrain in Fusion Automated Sketchingは、AIが設計者の意図を理解し、スケッチ内の空間的関係を自動的に検出する機能だ。対称性、相対的なスケール、部品間の関係などを分析し、適切な寸法拘束を提案する。この自動拘束機能により、設計者やエンジニアは何度も手動で関係を定義する手間から解放されるという。
Drawing Automationでは、AIにより3Dモデルから2D図面を自動生成する機能が強化された。AIが3Dモデルを分析し、各コンポーネントの図面シートを自動的にレイアウトして、スタイルを適用する。さらに、図面セットに不要な締結部品を識別して削除する機能なども追加されている。
Autodesk Assistantは、AIを搭載したオンデマンドの“専門アシスタント”機能だ。Fusionの機能や製造業に関する知見を備え、ユーザーの具体的な質問に対して詳細な回答を提供する。例えば「部品の荒削り」や「切削速度の最適化」などの製造関連の質問に回答するだけでなく、「スロットミルを避けてツールパスをプログラムするには?」といった質問に対し、Fusion固有の回答と併せて参考情報のハイパーリンクも提示してくれるという。
「Autodesk Assistant」について。画面右側にあるチャットボックスがお分かりだろうか。フーパー氏によると、ここに自然言語で質問を投げ掛けると「適切な解」を返してくれるという[クリックで拡大] 出所:Autodesk
パートナーシップ拡大でエコシステムを構築
データ連携で課題となるのが、機密情報の管理である。この点についてクーパー氏は「Fusionに高度な権限管理ツールを実装することで、特定のデータへのアクセスを精密に制御できるようになった。これにより、セキュリティを確保しつつ、必要な情報を、適切なタイミングで、適切な人物に提供することが可能になる」と説明する。
もう1つ、AU 2024で目立ったのはパートナーシップの拡大と買収による製品強化だ。前述の通り、オートデスクはサードパーティーとの連携を強化している。ERPと連携し、製品ライフサイクル全体を統合管理するには、多様な領域のベンダーとのパートナーシップが欠かせない。AU 2024では、この方針に基づいて複数のパートナーシップ拡大と戦略的買収が発表された。
具体的には、見積もりプロセスの自動化ソフトを提供するPaperless Parts、電子システム設計ツールを提供するCadence Design Systems、コンピュータ数値制御加工プログラミングソフトを提供するCloudNCとのパートナーシップ拡大が挙げられる。さらに、物理ベースのシミュレーションとCFD(計算流体力学)ソリューションを提供するNAVASTOの買収も発表された。NAVASTOの技術は、インダストリアルデザイン用ソフトの「Autodesk Alias」に、AIベースの風洞シミュレーション予測機能の一部として組み込まれる予定(2025年初頭)だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Autodesk プラットフォームがもたらす製造の未来 DXからAI、サステナブルまで
米Autodesk(オートデスク)は、年次カンファレンス「Autodesk University 2024」を米国カリフォルニア州サンディエゴで開催した。同社 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏らが登壇した初日の基調講演の模様をレポートする。 - オートデスクのプラットフォーム戦略とAI活用について日本のキーマンに聞いた
近年、オートデスクが展開を強化している「Autodesk プラットフォーム」と「Autodesk AI」の詳細について、日本のキーマンであるオートデスク 日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長の加藤久喜氏に話を聞いた。 - LA28では常設会場を新設しない Autodeskの「Design&Make」基盤が持続可能な五輪を実現
Autodeskは、同社の「デザインと創造(Design&Make)」のプラットフォームが、2028年開催のロサンゼルスオリンピック・パラリンピック競技大会(LA28)および米国チームの公式プラットフォームに選出されたことを発表した。 - 「Autodesk AI」が非創造的な作業からの解放やデータ分析、洞察の獲得を促進
Autodeskは年次グローバルカンファレンス「Autodesk University 2023」のゼネラルセッション(1日目)において、AIを活用した新たなソリューション「Autodesk AI」を発表した。 - 大規模製品モデルの研究を進めるオートデスク、AIが設計業務にもたらすものとは
AIが設計開発業務にもたらすインパクト、未来の設計/デザインの在り方について、Autodesk(米オートデスク) 製造業グローバルマーケット開発&戦略シニアディレクターのデトレフ・ライヒネーダー氏に話を聞いた。 - 機械学習やクラウド活用、パフォーマンス向上で設計業務を支援する「AutoCAD」
CADソフトの最新バージョン「AutoCAD 2024」の提供を開始したオートデスク。機能強化ポイントやAutoCADの製品戦略などについて、米Autodesk AutoCAD プロダクトマネジメント 担当ディレクターのダニア・エル・ハッサン氏に聞いた。