営業利益の改善にはデジタル技術活用が必須 製造業は先を見据えた人材育成を:ものづくり白書2024を読み解く(3)(5/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。
「3つの柱」で新たな価値を生み出す基盤づくりを推進
文部科学省はここ数年にわたり、「DX等成長分野の人材育成」「ものづくり人材を育む教育・文化芸術」「Society5.0を実現する研究開発」を3本の柱として、新たな価値を生み出す基盤づくりを進めている。
DXなど成長分野の人材育成については、数理/データサイエンス/AI(人工知能)教育のモデルカリキュラムや各大学などの取り組みを全国へ普及/展開させるためのコンソーシアム活動や、大学院教育におけるダブルメジャーなどを推進。また、産業人材育成を担う専門高校においては、マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)を実施。最先端の職業人材育成システムを構築し、成果モデルを示すことで、全国各地で地域特性を踏まえた取り組みを加速している(図28)。
さらに、企業成長に直結する、高等教育機関にしかできないリカレント教育モデルの確立に向け、産業界の人材育成課題や大学などの教育資源を整理した上で、具体のプログラム開発のための分析/ヒアリングなどを行う調査研究を実施し、日本社会の持続的発展に向けて産業界/個人/教育機関の成長を好循環させるエコシステムの創出を図っている(図29)。
モノづくり人材を育む教育/文化芸術については、日本の競争力を支えるモノづくりの次世代を担う人材を育成するため、モノづくりへの関心/素養を高める小学校、中学校、高等学校における特色ある取り組みの実施や、大学における工学系教育改革、高等専門学校における人材育成など、モノづくりに関する教育の一層の充実を図っている。
加えて、人生100年時代の到来に向けて、社会人向けの実践的な教育プログラムの充実や学習環境の整備を進めている。大学などでの社会人や企業のニーズに応じた実践的かつ専門的なプログラムを「職業実践力育成プログラム(BP)」として文部科学大臣が認定している。2023年では394課程だったが、2024年3月現在では426課程に増加した。
Society5.0を実現する研究開発については、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に基づき、総合知やエビデンスを活用しつつ、バックキャストにより政策を立案し、イノベーションの創出により社会変革を進めていく方針だ。この変革は「ものづくりに関する基盤技術の研究開発」と、「産学官連携を活用した研究開発の推進」の2本立てで進められる。
モノづくりに関する基盤技術の研究開発については、大型放射光施設(SPring-8)/X線自由電子レーザー施設(SACLA)、スーパーコンピュータ「富岳」など最先端の大型研究施設の整備/活用の推進、信頼性の高い次世代AI基盤技術の研究開発など未来社会の実現に向けた先端研究の抜本的強化、戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)など、科学技術イノベーションの戦略的国際展開が含まれる。
さらに、近年の日本で若手研究者が置かれている厳しい状況を鑑み、博士課程学生の処遇向上とキャリアパス確保を支援する「次世代研究者挑戦的研究プログラム」、大学フェローシップ創設事業を一体的に運用するなど、科学技術イノベーションを担う人材力の強化も掲げられている(図32、図33)。
産学官連携を活用した研究開発の推進については、省庁横断的プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」、研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)による社会実装の促進などがある。
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筆者紹介
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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