検索
連載

製造業におけるXR活用をハードウェアとソフトウェアの双方から俯瞰するテルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(6)(3/3 ページ)

連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第6回のテーマは「製造業におけるXR活用」です。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

製造業向けXRソフトウェア

 XR向けのソフトウェアは世の中にたくさんありますが、ここでは製造業向けの代表的なものを紹介します。

  • Vuforia/PTC
  • XVL VR/ラティス・テクノロジー
  • VPS Xphere/富士通|デジタルプロセス

Vuforia/PTC

 PTCが提供するARソリューション「Vuforia」は、3D CADデータを利用したAR作業手順書を作成したり、オフィスと現場をつないで遠隔作業支援などを行ったりすることが可能です。画像だけでなく、特定の物体を認識し、その周囲にARコンテンツを表示させることができます。開発環境としてノーコード/ローコードに対応しており、それぞれのニーズに合わせたARアプリケーションの設定/カスタマイズを行えます。

XVL VR/ラティス・テクノロジー

 「XVL」とは3D CADデータなどを軽量化し、Webブラウザ上で高速表示することが可能な技術で、ラティス・テクノロジーからさまざまなツールやサービスが提供されています。例えば、「XVL Studio VRオプション」(XVL VR)は、XVLデータをそのままVR表示することで、実機作成前の事前検証などに使用できます。また、「XVL Web3D ARアプリ」では、スマートフォンやタブレット端末などで、高精細な3DモデルをAR表示することが可能です。

動画1 「XVL Studio VRオプション」の紹介映像 出所:ラティス・テクノロジー

VPS Xphere/富士通|デジタルプロセス

 富士通の100%子会社で、パッケージ製品やエンジニアリングサービスなどを提供するデジタルプロセスが開発した製造業向けVRソフトウェア「COLMINA デジタル生産準備 VPS Xphere」は、3Dデータなどを仮想空間内に取り込み、実物大で再現することで、製造業の各種検証業務が行えます。

 生産設備や工作機械の導入前の使用感を検証するシミュレーションに活用されることが多く、コントローラーを使うことで、仮想空間内で頭の向きを変える/立つ/しゃがむ/工具や部品などのオブジェクトをつかむ/離すといったアクションが可能です。仮想空間は複数人で共有でき、マイクを通じたコミュニケーションなどにも対応しています。

今回のまとめ 〜各部門でのXR活用イメージ〜

 今回はXRをテーマに、代表的なハードウェア(デバイス)とソフトウェア(システム)を紹介しました。XR技術の発展には、ハードウェアとソフトウェアの両方の技術が欠かせません。双方が発展することで、より高機能でより高性能なツールが生まれ、製造業での活用もさらに進んでいくと考えられます。

 製造業でのXR活用の例を部門ごとに考えてみると、設計部門では、複数人が同じVR空間の中でデザインレビューを行ったり、動作確認や機能検証を行い問題点の早期発見に役立てたりすることが可能です。実物を作っての従来の検証と比較し、コストや時間を大幅に削減できます。

 製造部門では、ARグラスを通して作業手順や部品情報を表示することで、作業ミスを削減し、作業効率を向上させることができます。ARを使って熟練工の作業を記録し、若手作業員に共有することで、技術伝承を効率的に行えます。

 保守メンテナンス部門では、ARグラスを通して設備の点検箇所や修理方法を表示することで、点検作業の効率化とミス削減を実現します。遠隔地の専門家が現場作業員にリアルタイムで指示やサポートを行うこともできます。ARを使って設備の内部構造を可視化することで、点検箇所を容易に特定することが可能です。

 教育部門では、VR空間で実際の作業環境を再現し、作業トレーニングを行うことで、安全かつ効果的に人材教育を図れます。VRを使った危険作業のシミュレーション/コンテンツを通じ、安全意識の向上と事故防止に役立てることもできます。

動画2 【積木製作|VROX】安全体感VRトレーニング #028 工場内作業中の挟まれ事故体験 出所:積木製作

 以上のように、製造業でXR技術を活用することで、作業効率の向上や円滑なコミュニケーションの実現、人材育成の効率化、安全意識の浸透など、さまざまなメリットが得られます。今後も、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった技術と組み合わせることで、XRの活用範囲はさらに広がっていくと予想されます。ぜひ、この機会にXR技術の活用を検討してみてください。 (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る