NTNが新たに工作機械向け軸受などを開発、消費電力低減や加工精度向上に貢献:FAニュース
NTNは新たに複合加工機やマシニングセンタなどの工作機械向け軸受および軸受構成部品を開発した。いずれも「第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2024)」(2024年11月5〜10日、東京ビッグサイト)において展示する。
NTNは2024年10月17日、大阪市内およびオンラインで記者会見を開き、新たに開発した複合加工機やマシニングセンタなどの工作機械向け軸受および軸受構成部品を発表した。いずれも「第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2024)」(2024年11月5〜10日、東京ビッグサイト)において展示する。
カーボンニュートラルに貢献する新型保持器
転がり軸受は外輪、内輪、外輪と内輪の間に配置される転動体(玉、ころ)、転動体同士を等間隔に保つ保持器で構成され、潤滑によって油膜を形成して各部の摩擦や摩耗を低減させる。軸受の潤滑には潤滑油を圧縮空気で搬送するエアオイル潤滑や、軸受に初期封入したグリスのみで潤滑するグリス潤滑などあり、使用条件に適した方法が使われている。
常に新しいオイルが供給されるエアオイル潤滑が高速回転に適しているとされているが、エアやオイルの供給やオイルミストの回収などのための付帯設備が必要となる。エアオイル潤滑を使用した場合、工作機械の消費電力の約10%がエアコンプレッサーで使われるという。
保持器はフェノール樹脂と成形樹脂で作られたものがある。フェノール樹脂は潤滑材を保持しやすく高速回転対応が可能な一方、機械加工で作られるため大量生産に対応しにくい。成形樹脂は射出成型が可能で大量生産に向くが、高速回転に伴う軸受け内部の発熱で変形しやすいため低速、中速回転領域で用いられるなど、それぞれにメリット、デメリットがある。
今回、NTNが開発したのは、工作機械主軸用のグリス潤滑軸受向け成形樹脂の新型保持器だ。「もっとも技術力が試されるのが主軸の軸受になる。加工物の面品位や寸法精度に軸受で決まるといっても過言ではない」(NTN)。
加工時間の短縮に向けて、工作機械の高速回転化が進む中、工作機械の主軸用軸受にも高速回転性能が求められている。また、近年は省エネルギー化を目的としてグリス潤滑への切り替えが進むとともに、グリス潤滑の高速回転対応へのニーズが高まっているという。
NTNでは、解析や回転試験、強度試験を重ねてより耐熱性の高い材料を採用することで、高速回転に伴う発熱による変形の抑制に成功。成形樹脂保持器を用いた軸受として業界最高水準、同社の従来品比で20%増となるdmn値135万の高速回転対応を実現した。さらに保持器の形状を最適化し、軸受取り付け後の初期回転時のグリス挙動を制御することで、慣らし運転を含めた温度上昇を抑制し、長寿命化も実現した。
この新たな保持器は同社のULTAGE(アルテージ)シリーズを含む工作機械用のグリス潤滑軸受に適用し、グリス潤滑の対応領域を広げることで、エアオイル潤滑軸受からの切り替えを提案する。販売目標として2026年度に年間1.5億円の売り上げを目指している。
工作機械の高速回転化に対応するサーボモータ用軸受
工作機械の主軸の駆動部位に使用される工作機械主軸向けサーボモーター用軸受として、高速回転性能と低振動化を実現した「高速サーボモーター用深溝玉軸受」も開発した。
主軸の高速回転化、加工精度の向上に向けて、工作機械の駆動力を生むサーボモーターの軸受にも高速回転対応や低振動化が求められている。ただ、軸受が高速回転すると、遠心力で保持器の変形、破損したりや軸受内部が発熱したりする課題があった。
NTNでは保持器の挙動が振動の原因となることに着目し、保持器の材料や形状の見直しにより保持器挙動を安定させることで、高速回転性能と振動特性を向上させた。具体的には保持器の材料を見直すことで剛性を高め、遠心力による保持器の変形を低減したほか、保持器形状の最適化によりグリス封入量を増やし、潤滑性を向上させた。
これにより、回転性能としては同社の従来品比で40%増となるdmm値190万を実現したほか、保持器のポケットを保持器と転動体の接触をより安定させる形状とすることで、振動を従来品比で50%低減させることに成功した。対応サイズは内径40mmからとなっている。NTNでは、2026年度に年間1億円の販売を目指す。
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