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骨格内部の結合開裂により8の字型骨格のキラルπ共役分子を合成研究開発の最前線

名古屋大学は、8の字型にねじれた構造を持つキラルπ共役分子の新しい合成法を開発した。平面π共役分子の骨格内部の結合を切ることで、市販の原料から高収率かつ大スケールで合成できる。

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 名古屋大学は2024年9月24日、8の字型にねじれた構造を持つキラルπ共役分子の新しい合成法を開発したと発表した。平面π共役分子の骨格内部の結合を切ることで、市販の原料から高収率かつ大スケールで合成できる。

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研究の概要[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

 同研究では、ルテニウム触媒を用いたジヒドロキシ化と超原子化ヨウ素触媒を用いたグリコール開裂により、ジベンゾクリセン(DBC)の骨格内部の結合を切断。8の字型骨格のシクロビスビフェニレンカルボニル(CBBC)を合成した。収率は88%で、最大3.3gの合成が可能だ。

 また、光学活性な触媒を用いた反応では、不斉合成の1つである速度論的光学分割を達成した。鏡像体過剰率が94%eeと高いエナンチオ選択性で、光学活性なCBBCを獲得できた。

 研究グループは、得られた8の字型CBBCのさらなる機能化に取り組んだ。CBBCの周辺に電子供与性のカルバゾールを付与すると、ゆっくりと光を放出する熱活性化遅延蛍光や、1.0×10−2と高いg値の円偏光発光の性質を持つようになった。効率的な発光材料として3Dディスプレイ、暗号通信などへの利用が期待される。

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研究の成果[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

 8の字型π共役分子は、対称性の高い構造から円偏光発光特性を有し、3Dディスプレイ材料やセキュリティプリント材料の基盤骨格として注目されている。しかし、従来の合成手法では多くの工程が必要で、大スケール化や不斉合成が困難だった。

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