AIを活用したセラミック製品の高精度解析手法を共同開発、解析期間を10分の1に:マテリアルズインフォマティクス
日本ガイシ、名古屋大学、アイクリスタルは、人工知能(AI)を用いたセラミック製品の高精度解析手法を共同開発し、この手法を用いて製品特性の解析期間を短縮できる技術を確立した。
日本ガイシ、名古屋大学、アイクリスタルは2024年6月24日、人工知能(AI)を用いたセラミック製品の高精度解析手法を共同開発し、この手法を用いて製品特性の解析期間を短縮できる技術を確立したと発表した。日本ガイシはこのAI技術を、主力事業に適用して製品設計/評価期間の短縮を図るとともに、カーボンニュートラルやデジタル社会に貢献する新製品の早期開発に活用する。
自動車排ガス浄化用セラミック製品の評価に適用
今回の技術は、セラミック製品の評価に用いるシミュレーションをAIに置き換えることができる。名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授の宇治原徹氏が結晶育成法の研究で培ったAIモデルをセラミック製品向けに改良し、アイクリスタルが日本ガイシ向けにモデルの高精度化およびインタフェースの実装を行い、日本ガイシが製品評価への適用検証を行った。
従来のシミュレーションは精度が高い反面、専門チームによる作業を必要とし、計算にも長時間を要していた。一方、3者が開発したAI技術では、シミュレーションと同等の精度の解析結果をノートPCで手軽に得ることが可能だ。日本ガイシは、今回の技術を主力事業の自動車排ガス浄化用セラミック製品の評価に適用する。
このセラミック製品は自動車の排ガスにさらされる過酷な環境で使用され、高い信頼性/耐久性が求められるため、同社は実験とシミュレーションの両方を駆使した高精度な解析を繰り返し行っている。従来は実験結果を得てからシミュレーションによる解析が完了するまで1〜2週間を要していたが、このAI技術を用いることで最短1日に短縮できる。2024年度中に量産品の設計プロセスに組み込み、製品の信頼性向上と設計リードタイム短縮を実現する。
なお、今回の技術は、他のセラミック製品の特性解析にも広く展開可能だ。日本ガイシは、共同開発したAI技術により、設計プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速するとともに、同社のグループビジョンで掲げるカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する新製品の早期創出を目指す。
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