ispaceが米国投資会社から最大237億円を調達、ミッション3と6の確実な実行へ:宇宙開発
月面開発ベンチャーのispaceは、米国投資会社のハイツ・キャピタル・マネジメントが運用するCVI Investmentsを割当先とする第三者割当増資について発表した。2024年10月から2025年3月まで4回に分けて、総計1100万株の普通株式と11万個の新株予約権を発行することにより最大で総計237億円の増資を行う。
月面開発ベンチャーのispaceは2024年10月11日、オンラインで会見を開き、米国投資会社のハイツ・キャピタル・マネジメント(Heights Capital Management)が運用するCVI Investments(以下、CVI)を割当先とする第三者割当増資について発表した。同日から2025年3月まで4回に分けて、総計1100万株の普通株式と11万個の新株予約権を発行することにより最大で総計237億円の増資を行い、2026年に打ち上げ予定のミッション3、2027年打ち上げ予定のミッション4とミッション6の開発資金に充てる方針だ。
CVIとの契約では、ispaceの1100万株の普通株式と11万個(1個当たり普通株式100株に相当)の新株予約権を、2024年10月11日、同年11月18日、2025年1月14日、同年3月11日の4回に分けて発行する予定。第1回目については、普通株式275万株を1株当たり602円、新株予約権2万7500個を行使価額802円、1個あたり828円で発行しており、調達金額は総額約38.8億円となっている。
第2回目以降も普通株式275万株と新株予約権2万7500個を発行していくが、各回とも普通株式は前日終値の90%の金額、新株予約権は前日終値の120%の行使価額で発行するため、調達金額は変動することになる。4回とも第1回目と同じ2024年10月10日の終値で発行した場合の調達金額は約155億円だが、発行登録書記載の上限額まで行けば237億円まで増加する見込み。
今回のように4回に分けて普通株式と新株予約権の発行を行うのは、発行による株価インパクトを分散かつ軽減するとともに、株価が上昇した場合に調達金額を増加させることで希薄化を抑制し、将来的な事業進捗に伴う株価上昇が起きた場合に将来成長をさらに加速させ得る新株予約権による調達が期待できる点がメリットになるという。既存株主の利益に配慮しながらispaceの将来的な資金ニーズに対応し得る、現時点で最適な資金調達方法と判断した。
今回の第三者割当で調達した資金の内、普通株式による調達額は米国法人のispace technologies U.S.に対して投融資を行う。主にミッション3で利用するリレー衛星2基の購入代金の一部、Space Xのファルコン9による打ち上げ代金の一部、ランダー製造費用の一部として充当する予定だ。
新株予約権による調達額は、経済産業省が実施する「中小企業イノベーション創出推進事業」による120億円の補助金交付が決定している、日本法人によるミッション6の開発資金の内、補助金支給の対象外となるロケットの打ち上げ代金の一部と同ミッションに関わる人件費などの間接費用の一部として充当する。また、米国法人によるミッション4の将来的な開発資金とその他運転資金にも充てる予定だ。
ispaceは、今回の資金調達により、2027年までに打ち上げを予定する、2024年12月打ち上げ予定のミッション2、2026年打ち上げ予定のミッション3、2027年打ち上げ予定のミッション6を確実に実行可能とする開発資金を確保する。
ハイツ・キャピタル・マネジメントはispaceの創業当初から支援を行っているが、今回の大型増資を引き受けることによりispaceへの出資比率も大幅に高まる。普通株式1100万株分で出資比率約10%まで上昇する見込みで、11万個の新株予約権を行使すると20%近い出資比率になる可能性がある。ただし、ispaceとハイツ・キャピタル・マネジメントとの契約は、出資比率は10%を上限とするようになっているという。
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