逆風下で上場するispace、国内宇宙スタートアップの可能性を切り開けるか:宇宙開発(1/2 ページ)
宇宙スタートアップのispaceが東京証券取引所グロース市場に上場したと発表した。国内の宇宙関連スタートアップ企業としては初の上場となる。
宇宙スタートアップのispaceは2023年4月12日、東京証券取引所グロース市場に上場したと発表した。国内の宇宙関連スタートアップ企業としては初の上場となる。公募価格254円に対して買い気配で585円となったものの、取引は成立せず売り出しは行わなかった。併せて、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1が順調に進んでおり、ランダー(月着陸船)の月面着陸予定日時を同年4月26日1時40分(日本時間)に設定したことを明らかにした。
同日午後の取引終了後には東京証券取引所内で会見を行い、ispace 代表取締役 CEOの袴田武史氏と同社 取締役 CFOの野崎順平氏が、事業計画や今後の成長可能性について説明した。袴田氏は「宇宙に生活圏を作る、そのために月に新たな経済圏を創出することが当社のビジョンとなる。2022年12月末に、営利企業のとして世界で初めて月着陸船の打ち上げに成功しており、これは競合他社に対する競争優位となっている」と語る。
NASA(米国国宇宙局)が主導するアルテミス計画などの政府プロジェクトによって市場拡大が始まる月輸送関連市場は、2036〜2040年には民需の拡大で1710億米ドルまで伸長が見込まれている。この拡大する市場の中でispaceは、月周回軌道や月面まで顧客の荷物を預かり輸送するペイロードサービスを事業の中核に据えていく方針だ。同社はペイロードサイズ500kg以下の小型セグメントで事業を展開し、この小型セグメント市場の規模は2036〜2040年に533億米ドルに達するという。
この他、ランダーやローバー(月面探査車)へのロゴ掲載や技術開発で協業するスポンサーを募るパートナーシップサービス、ペイロードサービスを展開する中で取集した月面に関するさまざまなデータを提供するデータサービスなども展開する。ペイロードサービスについては、間もなく月面着陸を迎えるミッション1と、2024年度に予定しているミッション2は想定販売重量の100%のペイロードが契約済みだ。ミッション1とミッション2で運用するシリーズIランダーはペイロードが最大30kgだが、ミッション3からはペイロード最大500kgのシリーズIIランダーを投入する。
上場に合わせて発表したispaceの業績は、2021年度(2022年3月期)が売上高6億7400万円、営業損失40億5600万円で、2022年度が売上高9億8400万円、営業損失108億5200万円となる見込み。スタートアップとして投資フェーズにあるため大幅な赤字だが、2023年度は売上高61億9600万円、営業損失71億1800万円と、売上高が大きく伸び営業損失額も少なくなる見込み。これは、ミッション1の完了とミッション2とミッション3の開発進捗に伴ってペイロードサービス事業の売上高として54億7500万円が計上されるためだ。袴田氏は「現在3つのミッションを同時実行する中で資金も獲得するなど、ispaceの事業モデルはミッションごとに予算を確保する旧来型の宇宙事業モデルとは一線を画しており、1ミッションの成否が事業継続に大きく影響しないようになっている」と説明する。
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